福島 フクシマ FUKUSHIMA

津波被害と原発震災に立ち向かう人々とともに

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

「裏切られた。撤回してほしい」    福島で支援法基本方針の説明会

0911kdm00101.jpg





 「多くの人が支援法に期待していた。でも裏切られた。この基本方針は撤回して、作り直して下さい」

 2012年6月に成立以降、長らく店晒しにされてきた「子ども・被災者支援法」について、その基本方針案が8月30日にようやく公表され、復興庁の主催する説明会が9月11日に福島市内で開かれた。平日の午後という日程の中で、福島県内の住民、福島から県外への避難者、さらに宮城、群馬、栃木などの住民ら約170人が参加。国側からは、浜田復興庁副大臣、復興庁の担当者、文科省、経産省などの担当者が出席。
 住民が次々と意見表明を行い、論議は予定を大幅にこえて3時間近くに及んだが、国・復興庁の基本方針案の説明は、子ども・被災者支援法の当初の基本理念からも、被災者の求めるものからも、全くかけ離れたものだった。参加した住民らは全く納得できず、会場は、「撤回しろ」「公聴会を開け」という厳しい批判と怒号であふれた。


0911kdm002.jpg 
(発言する浜田復興庁副大臣・写真右)




【Ⅰ】  「被災者を抜きに被災者のことを決めるな」



 説明会では、福島から北海道や静岡に避難・移住した住民、福島県内に留まっている住民、強制避難区域から避難を余儀なくされている住民、そして、宮城、栃木など高線量の地域がありながら支援対象から外された地域の住民など、様々な立場から切実な訴えがなされた。
 以下にその一部を紹介する。


0911kdm00102.jpg 


・「地域指定については、年間追加被ばく線量1ミリシーベルト以上のところについてはすべて指定すべき。今回の基本方針案では地域指定が33市町村で限定されている。根本大臣が会見で『分断をしないために33市町村にした』と言っていたが、これでは復興庁自ら分断をするようなものだ」(いわき市・男性)

・「事故前の公衆被ばく限度の1ミリシーベルトというのが、国民が合意できる数値だ。根本大臣が、100ミリシーベルト以下の被ばくでは健康被害は認められていないと発言したのを聞いて、私はぼう然とした」(郡山市から静岡県に避難・男性)

・「対象区域の基準を検討するとき、財政ということを考慮して、1ミリシーベルトだったらこのぐらい、5ミリシーベルトだったら、20ミリシーベルトだったらと予算のシミュレーションをしたのではないか。1ミリシーベルトのとき、どのくらいの予算規模という風にシミュレーションしているのか」(郡山市・女性)

・「飯舘村では、住民の間で、『帰りたい、帰りたくない』と別れて、議論が前に進まない状況。その根底には、今回の事故で人の数だけ安全基準ができてしまった問題がある。そのために対立や葛藤が生まれている。震災前の法律とチェルノブイリの経験則に基づいた合理的判断があれば、その軋轢は緩和され、被災者同士の理解も進むのではないか」(飯舘村から避難・男性)

・「丸森町は支援対象地域から外された。『丸森にも線量の高いところがあるが、ほとんどが山』というけど、そこにも人が住んでいる。自主避難者の数もかなりの数になる。避難したくても支援制度がないから避難できない。自主避難者の数は支援制度があるかないかで全然違う。復興庁は自主避難者の数を把握しているというがどういう調査をしたのか」(宮城県丸森町・男性)

・「県境を越えて近隣県に放射性物質は降下している。栃木県では、同じ被災地であるにもかかわらず、同じ支援を受けられない。とくに子どもをもった保護者が追い詰められている。保護者の希望が多いのは健康調査。それに関して、国の説明では、近隣県でもこれから個人線量計で測ると。2年半も待たされて今から調査とは。多くの人が心配しているのは、3月11日、情報がなかったから子どもを外で遊ばせていたといったこと。有識者に意見を聞くのではなく、被災者にどういう不安があるかを丁寧に聞いてほしい」(栃木県宇都宮市・女性)

・「この説明会を一回やっただけで基本方針を閣議決定してはいけないというのが今日の大多数の声だ。われわれ被災者を『田舎もんの知性のないクソども』と愚弄するような人間(暴言ツイートを行った復興庁官僚を指す)が作ったから、こんな基本方針しかできなかった。もう一回仕切り直すべき。被災者支援法は、被災者のための法律でしょ。留まる、避難する、どんな選択も応援しようと作った法律でしょ。その私たち被災者を抜きにして私たちのことを決めないでほしい。今から全国で公聴会を開くべきだ」(福島市から北海道に避難・男性)

・「基本方針を決めるに当たって、復興庁はいろんな会議をやったと思うが、議事録が一切残っていない。何を資料にして検討したかも出ていない。いわんや有識者と言われる人たちがどういう人か全然分からない。要するに、闇の中で勝手に決めている。そして施策は、従来各省庁が本来やるべき施策の寄せ集め。こんなものを基本方針というのは、全く驚きだ」(福島市内・男性)

・「多くの人が支援法に期待していた。やっとできたので見たところ、こんなに裏切られたものはない。この基本方針は撤回をして、作り直して下さい」(浜通りの避難区域・男性)


0911kdm005.jpg 
(飯舘村の現状を訴え、基本方針案の撤回を求める男性)

      ・             ・            ・          

 基本方針案に対する住民の意見の中には、様々な問題が提起されている。以下では、議論の中ではある程度前提になっている事柄に立ち戻りながら、【Ⅱ】で、子ども・被災者支援法の趣旨と成立後の動きを概観し、【Ⅲ】で、基本方針案の問題点を批判・整理し、【Ⅳ】で、説明会を通して突き出された子ども・被災者支援法と基本方針案をめぐる今後の論点をつかむ、という順序で考えてみたい。




【Ⅱ】  1年以上の店晒し



 ここでは、子ども・被災者支援法の趣旨と、成立後の動きを簡単に概観することを通して、子ども・被災者支援法の当初の基本理念とも、被災者の求めるものとも、全くかけ離れた基本方針案が出てきた経緯を見てみたい。



居住も避難も帰還も支援する理念


 子ども・被災者支援法とは、正式には「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」。2012年6月、当時の与党(民主党)と野党(自民、公明、みんな、共産、社民など)の全会一致で成立。
 この法律の基本理念は、原発事故によって放射性物質が拡散し、被ばくが健康に及ぼす危険が続く中で、被災地域に住み続ける選択も、被災地域から避難する選択も、避難先から帰還する選択も、いずれの選択をも被災者自身の自己決定として尊重し、支援するというもの。とくに子どもや妊婦への特別の配慮が行われるべきとするものであった。(子ども・被災者支援法第2条)
 その理念は被災者の切実な要望に応えるものとして期待された。ただ、成立した同法は、あくまでも具体的な支援策が明記されていない理念法であり、その具体化は政府の検討に委ねられた。



「白黒つけずに曖昧なままに」


 しかし、政府から具体策は示されず、予算もつかないという店晒しの状態が続いた。
 そうした中、復興庁で子ども・被災者支援法に基づきその具体的な支援策の取りまとめに当たっていた水野参事官(当時・写真下)が、ツイッターで暴言を繰り返していた問題が報道された。〔毎日新聞 2013年6月13日付〕


0911kdm003.jpg
(復興庁の水野参事官・当時)


 水野参事官は、今年3月7日、衆院議員会館で市民団体が開いた集会で、復興庁の担当者としてとりまとめ状況を説明していたが、同日、「左翼のクソどもから、ひたすら罵声を浴びせられる集会に出席」とツイート。また、翌8日には「今日は懸案が一つ解決。正確に言うと、白黒つけずに曖昧なままにしておくことに関係者が同意」と。
 水野参事官には残念ながら「ひたすら罵声」としか受けとめられなかったが、その声とは、子ども・被災者支援法の理念に則って支援策を具体化してほしいと訴える被災者の切実な声のことだった。また、後者のツイートにある「懸案」とは、子ども・被災者支援法がその条文で、「一定の基準以上の放射線量が計測される地域」を支援対象地域と指定するように求めており、放射線量に基づく基準を別途に定める必要があり、その基準を具体的にどう設定するかという問題だ。ところが、それについては、同法の条文に反して、「放射線量の一定の基準」は具体的に決めないで「白黒つけずに曖昧なままにしておく」ことで「解決」したという。そういう合意を「関係者」すなわち関係省庁の幹部の間で秘密裏に行っていたというのだ。
 つまり、国・復興庁としては、自主避難者も含めて支援を行うとした子ども・被災者支援法の成立を歓迎しておらず、その具体化を先延ばしし、あるいは中身を骨抜きにしたいという意図が見てとれる。水野参事官のツイートは、その個人の心情にとどまらず、国・復興庁の意志を正直に吐露したものだった。成立から1年2カ月も店晒しにされた理由もここにあった。
 そうした経過を経て出てきたのが、8月30日に公表された基本方針案。それは、子ども・被災者支援法の当初の基本理念とも、被災者の求めるものとも、全くかけ離れたものであった。




【Ⅲ】  支援法の理念を否定する基本方針案



 国・復興庁の示した基本方針案の問題は、以下の点に要約されるだろう。


0911kdm007.jpg 



(一) 線量基準を示さず対象地域を限定 


 子ども・被災者支援法は、上でも触れたが、被災者を支援する際に、支援対象地域を指定するとしている。そして、その支援対象地域とは、「その地域における放射線量が政府による避難に係る指示が行われるべき基準を下回っているが一定の基準以上である地域」と規定している。〔法第8条〕したがって、ここでいう放射線量についての「一定の基準」を別途に定めることが求められている。
被災した住民は、放射線防護の法令が前提とする追加被ばく線量年間1ミリシーベルトを基準にした支援を求めている。
 ところが、国・復興庁の示した基本方針案は、同法の条文に反して、放射線量に基づく基準を示さなかった。そして、支援対象地域を福島県の中通り・浜通りの33市町村に限定した。このために、福島県の会津や宮城県、栃木県、茨城県、千葉県などで放射線量の高い市町村があり、それらの自治体からも子ども・被災者支援法の適用を求める声があがっているにもかかわらず、指定から外された。避難対象地域に準ずるとして準支援対象地域という規定もあるが、施策の実質が伴わず、支援対象地域の限定性は変わらない。



(二) 居住・避難・帰還の選択認めず、避難者の帰還を促進


 子ども・被災者支援法は、その基本理念で、放射線が健康に及ぼす危険を鑑み、被災地域に住み続ける選択も、避難する選択も、帰還する選択も等しく支援するとしている。
 ところが、基本方針案で示された支援の中身は、その基本理念を事実上否定している。
 まず、施策のほとんどが既存の施策を並べたものに過ぎない。例えば医療の確保や子どもの就学支援といったことが並んでいるが、これらの施策は、原発事故の被災地域でなくても必要な施策であり、子ども・被災者支援法の基本方針にあえて書き込むものではない。

◇避難者に対する施策なし

 何より、居住・避難・帰還のいずれをも支援するという基本理念に反して、避難者に対する新規の施策は全くない。高速道路の無料化はすでに実施されている。しかも二重生活を強いられている母子避難者に限定されている。また、借り上げ住宅の供与期間を平成27年3月まで延長する点も新規の施策ではない。しかも原発事故による避難の長期性からすれば、小刻みの延長は現実に即していない。

◇帰還の促進

 その一方で、避難者の帰還を促進する施策に重心が置かれている。たとえば、住宅支援では、福島県外への避難者にとって住宅支援は借り上げ住宅の供与期間の小刻みな延長だが、福島県内に帰還する場合、子育て定住支援賃貸住宅の整備の支援や公営住宅への入居の支援などと充実している。また、就業支援では、福島県外への避難者が、福島県内に帰還を希望する場合、その就業支援が行われるが、その逆の福島県外への避難者には、同等の支援が行われるわけではない。

◇被ばく低減策なし

 さらに、子どもに対する施策では、何よりも被ばく低減を柱にするべきだが、その点が全く曖昧になっている。運動機会の確保、自然体験活動、プレーリーダーの養成、大型遊具の設置などが並ぶ。もちろんこれらの施策も有用であろう。しかし、被ばく低減のためには、被災地域からの避難がベストであり、それが叶わないにしても一定の期間の定期的に被災地域外に移動・保養する必要があるという事柄が中心に貫かれていないために、被ばく低減のための施策になっていない。

◇幅広い疾病対策なし

 健康にかんする施策では、福島県の県民健康管理調査を継続することが中心になっている。福島県の県民健康管理調査は、その目的ややり方について、被災者から強く批判されているものだ。施策のほとんどが、甲状腺ガン以外の健康被害はないという立場に貫かれており、被災者が求めている幅広い疾病の可能性に対する施策は全くない。また、福島県外での健康調査については、有識者会議を開催して検討というのが唯一の施策になっている。

◇放射能安心キャンペーンまで

 加えて、その他の支援として、IAEA(国際原子力機関)と福島県の間で昨年末に締結された協力プロジェクトを実施するとある。核開発と原子力推進の国際機関であるIAEAは、原発事故に起因する生活破壊や健康被害を極力小さく見せることに努め、放射能と共存するような住民意識を育てる目的で福島県に常駐している。〔本サイト 「【論考】 IAEAと福島」参照〕
 また、その他の支援で、放射線影響に関するコールセンターを設置し、学校の副読本などの統一的資料を作成し、国民の理解促進を行うという。2011年10月に文科省が『放射線等に関する副読本』を作成しているが、それは、放射線の効用については詳細に記述しているが、その危険性や健康被害についてはほとんど触れていない。被ばくの影響は、ICRP(国際放射線防護委員会)の判断だけが正しいように取り扱っている。ほとんど根拠もなく放射能安心神話を刷り込むような内容だ。
 IAEAとの連携といい、国民の理解促進といい、これらを被災者支援の施策として並べること自体が全くおかしい。


 
(三) 当事者である被災者の意見を無視

 
 子ども・被災者支援法は、被災者の声を反映させるように定めており、住民らが意見を述べる場の設定を求めている。
 にもかかわらず、国・復興庁は、公聴会を開催せず、福島と東京での2回の説明会と2週間のパブリック・コメント(その後10日間延長)だけで意見を聴取したとし、10月15日召集の臨時国会に間に合わせるために閣議決定を急いでいる。

 以上のように、被災地域の住民の訴え、全国の住民の声が、子ども・被災者支援法を成立させたわけだが、国・復興庁の示した基本方針案は、それを否定し全く反対のものにしようとしている。




【Ⅳ】  「危険か安全かではなく不安」という論理



 今回の説明会で、もっとも大きな論争点は、子ども・被災者支援法が、支援対象地域の指定に際して、放射線量を基準とすることを求めているにもかかわらず、基本方針案では、それが示されなかったことだ。
 復興庁の担当者は、その批判への弁明に終始していた。中でも、次のような弁明には注目する必要がある。
 「(ある放射線量が)危険か安全かという話はこの法律には関係ない。安全かどうか分からないから不安になるのであり、その不安に対して適切な施策を取るというのがこの法律の趣旨。その趣旨に則って、特定の数値は定めないで対象地域を定めた。これがもっとも留意した点だ」
 「不安ということについて、どこまで科学的かという指摘もあったが、放射線関係の有識者だけではなく、社会学や心理学の有識者からも意見を聞いて決めた。有識者の意見について、公開しないという前提で率直な意見を聴きたいので公開はしない」



0911kdm006.jpg
(弁明に終始する復興庁の金澤企画官・写真左)



1ミリシーベルト基準の忌避


 まず、繰り返しになるが、子ども・被災者支援法には、支援対象地域とは、「その地域における放射線量が政府による避難に係る指示が行われるべき基準を下回っているが一定の基準以上である地域」と明示されている。一定の基準を示すことは法律の要請するところである。
 その上で、放射線に関して数値基準を議論すること自体がそぐわないかのように復興庁の担当者は説明しているが、別のところでは国は数値で基準を示している。
 例えば、文科省は、2011年4 月、福島県内の学校の校庭利用などに関する通知で、幼児、児童、生徒が受ける放射線量の限界を年間20ミリシーベルトとした。親たちの強い反対で押し返された形にはなったが、撤回はしていない。
 また、避難指示区域の再編でも20ミリシーベルトを基準にした。国は、当初の警戒区域、計画的避難区域という避難指示区域の再編を2011年末に決定、▽12年3月から数えて5年以上戻れない帰還困難区域(年間放射線量50ミリシーベルト超)、▽数年での帰還をめざす居住制限区域(同20ミリ超~50ミリ以下)、▽早期の帰還をめざす避難指示解除準備区域(同20ミリ以下)とした。この20ミリシーベルト基準によって、賠償の打ち切りや帰還の促進ということが進められている。
 一方、被災者が求めているのは、事故前から法令で定められてきた追加被ばく線量は年間1ミリシーベルトが限度という基準であり、いわゆるチェルノブイリ法と同レベルの基準と支援だ。チェルノブイリ事故後ベラルーシにおいては、年間1~5ミリシーベルトの被ばくを余儀なくされる地域では、被災者は他の地域への移住を選択することができ、その場合、居住と仕事に関する国の支援が行われた。
 この被災者の求める1ミリシーベルトという基準を、どうしても受け入れたくないというのが、数値基準を示さない国の本音であろう。



支援法の意図と解釈


 ところで、「危険か安全かではなく不安」という論理は、一見、数値で機械的に区切るよりも、「不安」に対して広く支援しようという寛大な措置のように取れる。
 そもそも、子ども・被災者支援法の目的においても、「放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていないこと等のため、・・・被災者が、健康上の不安を抱え、生活上の負担を強いられており、その支援の必要性が生じている」「被災者の生活を守り支えるための被災者生活支援等施策を推進し、もって被災者の不安の解消及び安定した生活の実現に寄与する」(法第1条)とある。
 「健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていない」とあえて書き込むことで、低線量被ばくの健康影響に関する不毛な論争を避け、被災者の「健康上の不安」と「生活上の負担」をとらえて、それに対して実質的に支援を獲得することを意図したものともといえる。少なくとも善意に読めばそういうことだ。
 そういう条文にすることを可能にしたのは、被災者の強い訴えであり、それを支援する全国の運動の力だ。それが全政党を動かし、官僚たちをここまで押し込んだ。しかし、その後の政治は逆方向に流れた。民主党政権の後退があり、昨年12月の自民党の政権復帰があり、官僚たちの態度も元に戻っている。先に見た復興庁参事官の暴言ツイートもそういう中で起こったことだった。そして、こういう官僚たちによって、子ども・被災者支援法の解釈も大きく巻き返されていった。



「不安」の意図のすり替え


 ところで、被災者が原発事故によって受けている被害は「不安」なのか。
 被災者は、事故によって拡散した放射性物質に由来する放射線によって日々被ばくさせられている。その被ばくによる健康被害にはしきい値がない。つまり、ある被ばく線量以下だったら健康被害はないということはなく、ICRP(国際放射線防護委員会)ですら、被ばく線量に応じて影響・被害があるとしている。
 そして、被ばくとは、遺伝子に傷をつける傷害行為。つまり、国および東京電力による被災者に対する加害なのである。
 「危険か安全かではなく不安」とする論理は、被ばくが傷害であり、加害という実体のある行為を、「不安」という心理的な問題にすり替え、国および東京電力の罪を曖昧にし、被災者の支援の要求を軽んじ、切り捨てる方向に働く。
 子ども・被災者支援法の理念が、こうして否定されている。



やはり線量基準がカギ


 では国は、この先も「白黒つけずに」というやり方を続けるつもりなのかというと、そうではないようだ。
 根本復興大臣が、今年3月に次のように述べている。
 「住民が安全・安心に暮らしていくためには、線量基準に対する考え方について客観的な根拠に基づく国民の理解が必要だ。子ども被災者生活支援法における適切な地域指定のあり方を検討するためにも、国際的な科学的知見も踏まえつつ、事故後の個人の実際の被ばく線量等の実態も考慮して議論を進める必要がある。ついては、線量水準に応じて講じるきめ細かな防護措置の具体化について、原子力災害対策本部で議論を行い、年内を目途に一定の見解を示していただくようお願いする。原子力規制委員会が、科学的・技術的な見地からの役割を十分に果たしていただくようお願いする」(2013年3月7日 復興推進会議/5月10日 参院特別委員会でも同趣旨を答弁)
 年内を目途に被ばく線量基準に関する考え方を示すと言っている。「国際的な科学的知見も踏まえつつ」と言っているのは、ICRPの見解以外にない。
 2011年11~12月に6回にわたって行われた「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」(当時の民主党政権下で政府・官僚・有識者が内外の専門家から報告を受けた)の場で、ICRPの主要メンバーが報告を行い、<チェルノブイリの場合、1年目は100ミリシーベルト。5年目でも5ミリシーベルト。だから日本政府は、1ミリシーベルトという要求に屈してはならない>という趣旨で強く釘を刺している。それは、言うまでもなく、日本で1ミリシーベルト基準による支援や避難が行われてしまったら、それが他国に波及し、原子力産業と核兵器開発の推進が困難になるような打撃になると見ているからだ。〔本サイト 「【論考】 IAEAと福島【Ⅳ】」参照〕
 原子力災害対策本部でのその後の議論については見えてこないが、被ばく線量の基準ということが、懸案になっていることは間違いない。この問題は、被災者の支援や被災者同士の分断の解消といった原発事故により生起するあらゆる被害の問題のカギをなすだろう。そして、原発推進政策そのものの是非を問うような重大問題となってくるだろう。  (了)




 


関連記事
スポンサーサイト

テーマ:「原発」は本当に必要なのか - ジャンル:政治・経済

  1. 2013/09/18(水) 00:07:16|
  2. 対政府交渉・訴え
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<国と村長にものを言う議員を    ルポ 飯舘村議選 | ホーム | 汚染水流出  その危機の本質>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://fukushima20110311.blog.fc2.com/tb.php/87-cf8902e3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。