福島 フクシマ FUKUSHIMA

津波被害と原発震災に立ち向かう人々とともに

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【論考】  IAEAと福島  〔その3〕





【論考】  IAEAと福島  〔その3〕




【Ⅰ】IAEAが福島に拠点
【Ⅱ】原発再稼働とIAEA安全基準
【Ⅲ】除染ミッションの指摘
【Ⅳ】低線量被ばくとロシャール
【Ⅴ】IAEAが健康調査を支援
【Ⅵ】改めてIAEAとは
【Ⅶ】IAEAと福島県当局
 
 以下のように3つに分けて掲載
【Ⅰ】【Ⅱ】【Ⅲ】‥‥‥‥〔その1〕
【Ⅳ】【Ⅴ】‥‥‥‥‥‥〔その2〕
【Ⅵ】【Ⅶ】‥‥‥‥‥‥〔その3〕

・〔人物について敬称は省略した〕
・〔参照・引用した資料は末尾に掲載〕




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【〔その2〕から続く】



 
【Ⅵ】  改めてIAEAとは




 ここまでIAEAが福島で何をしようとしているのかを中心に見てきたが、ここで改めて、そもそもIAEAとは何か、といったことにについて触れておこう。


(一) 「核の番人」の意味


 IAEAとは、1957年に発足した国際機関。国連の機関ではないが、密接な関係にある。2011年の加盟国は151カ国。 
 IAEAの目的は、「原子力の平和利用を促進し、原子力の軍事転用の防止」。そして、憲章が定めるIAEAの任務は、原発の推進、放射線利用の促進、核拡散阻止のために査察の3分野。
アメリカを中心とする核大国が、核兵器を独占し、核による世界支配を維持し、それに挑戦する国の台頭を許さないという仕組みである。
 IAEAの任務の重心は核査察にある。実態から見ても、職員数約2300人の内、査察分門が約660人にたいして、原子力安全部門は約160人。しかも、原子力安全部門が設置されたのは、チェルノブイリ事故の後になってから。
 さらに、今日、イランや北朝鮮の核が問題視されているが、実は、IAEAが最も力を割いている国のひとつが日本。日本には、査察対象施設が250カ所、20~25人の査察官が常駐、とくに青森県の六ヶ所村の再処理工場には常時数人の査察官が張りついている。全予算の25%が対日査察に投じられている。
 これは、日本が、1954年に原子力予算を通して以来、「当面核兵器は保有しないが、核兵器製造のポテンシャルは保持する」(外務省)〔*40〕という政策を取っているからだ。IAEAは、平和利用と軍事利用は分けられるものではないと当然ながら見ているのだ。


(二) 原子力の推進機関


 その上で、IAEAは、その憲章に「機関は、全世界における平和、保健及び繁栄に対する原子力の貢献を促進し、及び増大するように努力しなければならない」(憲章第2条)とある通り、原子力の推進機関だ。
 そして、「原子力安全」といった言葉は度々使われるが、実際のところ、安全やそのための規制という意識は希薄だ。
 たとえば、チェルノブイリ事故の直後に、IAEAのブリクス事務局長は次のように発言している。
「核エネルギーの重要さを考えれば、チェルノブイリ規模の事故が年に一度程度あっても我慢できる」〔*41〕
既に上でも、IAEAとそれに連なる人びとの基本に、<原発事故を繰り返しても、原発を推進する>という姿勢があると批判してきたが、まさに公式の発言としてもそれを確認することができる。


(三) 否定と隠ぺいの手口


 ところで、IAEAをはじめとする国際機関が、チェルノブイリ事故による汚染地域に入り、現場を見て、なお「放射線の影響はなかった」「放射線と疾患の関係は証明されなかった」と繰り返しているということを上でもみてきたが、どうやったらそんなことができるのか。
 このことを、『終わりのない惨劇 チェルノブイリの教訓から』(ミッシェル・フェルネックス他 竹内雅文訳)が暴露しているのでまとめてみた。


 ▽ WHOを支配下に


 IAEAが、WHOを事実上支配下に置く協定が大きく規定している。
 原子力産業が始まったころ、WHOの下にいる研究者たちが危惧を抱き、1956年に、「未来の諸世代の健康が、原子力産業の成長と放射線源の増大によって脅かされている」と警告するWHO文書を出している。これは、原子力を推進勢力にとって、大変なブレーキだ。
 そこでIAEAが1957年に設立され、1959年には、「IAEAとの同意なしにはWHOが研究や調査はできない」という協定が結ばれる。この協定によって、核・原子力による健康被害などの調査に関わる問題は、IAEAが仕切ることになり、WHOは「すべての人びとの健康を増進し保護する」(WHO憲章)と掲げながら、IAEAと一体で健康被害を否定・隠ぺいする側に回った。
 そして、重要なのは、その否定・隠ぺいの手口だ。同書では、IAEAとWHOの驚くべき否定と隠ぺいの手口が暴露されている。それを簡単にまとめると以下のようになるだろう。
 

 ▽ 会議からの排除


 95年ジュネーブで開催されたWHO会議の例。
 チェルノブイリ事故後の健康影響に関する研究報告があるということで、各国から医師や専門家など多数参加があった。そこで、IAEAは、原子力推進派に動員をかけ、議論が白熱する中で、低線量被ばくの影響に言及する発言者については、今後はすべての大会のプログラムから排除すると激しく攻撃した。これ以降のWHOの国際会議では、排除が原則になったという。


 ▽ 定義の限定


 健康被害という定義を都合よく限定し、統計を操作する。

 ◇「放射線起源の死に至る癌」
 「死に至る癌」に限定し、死には至らないとしている癌や良性腫瘍はカウントしない。
また、放射線起源以外の癌も認めず、放射線によって助長された癌はカウントしない。

 ◇「生きて生まれた子どもたちにみられる、重度の遺伝性疾患」
 「重大な遺伝性疾患」でなければならない。「たいへん稀で、たいへん重い病気」と読み替えられる。
 喘息が広く見られることは認められない。
 死産も認定されない。
 
 ◇「重度の精神遅滞」
 催畸形性について、「重度の精神遅滞」しか認めない。「重度の精神遅滞」とは、挨拶に返事が返せない人と、一人では食事ができない人に限定。それ以外の障碍は一切に認定しない。
 しかも、妊娠8週目から15週目の間に被ばくした場合に限定。
 

 ▽ 不適切な指標の選択
 

 不適切な指標を意図的に設定することで、現実とはかけ離れた統計上の結果を報告する。

 ◇発症率ではなく死亡率を選択する。
 96年の公式文書「死亡率の際立った増加はまったく見られない」
 被ばくから10年後に限って、癌の死亡率を取る。発症率ではなく死亡率。現代の医療では、癌も治癒するし、死を先延ばしもできる。10年後に限定し、死亡率だけを見れば、「際立った増加はまったく見られない」となる。

 ◇不適切な病理を選択する。
 被災国で問題になっている糖尿病については研究せず、肝硬変を研究する。

 ◇研究期間を不適切に設定する。
 悪性腫瘍の潜伏期間より前に研究が終了するように研究期間を設定する。

 ◇危険の大きな集団は取り除く。
 子どもや妊婦は、研究の標準仕様指示から取り除く。

 ◇統計がないと強弁
 「罹患統計が存在しない。よって畸形の発生はない」。1995年IAEA総会での報告。
 60年代に高い催奇形性で問題になったサリドマイドの弁護人の論法と同じ。
罹患統計がないから、形成不全と放射性降下物との因果関係がないという証明には当然ならない。しかも、実際には、ベラルーシで原発事故の4年前から、罹患統計はつくられていた。
事実、ベラルーシでの先天性畸形の発生率は、母親が妊娠中に居住した地域のセシウム137による汚染の度合いに比例している。 


 ▽ フェルネックスの警告 


 IAEAを告発し続けてきたフェルネックスが、福島原発事故後に、フランスのメディアの質問に答えて、IAEAとWHOがこれから福島で行うとしていることを次のように警告している。それをこの節の最後に確認しよう。

 「(IAEAとWHOは)病人の数が40人だとか50人だとか、5000人だとか、あるいは50万人だとか言うことでしょう。何人になるかは、IAEAの出してくる数字次第ということです」〔*42〕




【Ⅶ】  IAEAと福島県当局




 ここまでIAEAが福島で何を行なおうとしているのかということを見てきた。しかし、これでこの論考を終わりにできない。県当局の動きの問題があるからだ。
 冒頭でも触れたように、IAEAの誘致は、福島県の側から要望書を出して働きかけている。しかも、金が出せないとIAEAが言えば、県が金まで用意する厚遇だ。
 また、上述の日本財団と県立医大による国際会議も、当初、日本財団が東京での開催を準備していたものを、「福島県知事の強い要望」〔*43〕で福島県となったという経緯がある。
 佐藤知事が、2012年8月の欧州訪問の報告会見で次のように述べている。
「特にIAEAでは、天野事務局長と会談させていただき、除染や健康管理の分野における共同プロジェクトを実施することで合意し、12月の原子力安全福島閣僚会議の際に、覚書の締結を目指そうということになっております」〔*44〕
 さらに、佐藤知事は、在ウィーン大使の訪問を受け、「(IAEA福島閣僚会議の開催が)被災した人にとっても安心の一つとなればうれしい」と発言している。(2012年11月12日読売新聞)


 ▽ 「脱原発」宣言と矛盾


 ところで、IAEAの誘致を巡って、福島県の復興計画検討委員会(第2回、昨年11月14日)において、次のようなやり取りがあった。

 「『IAEA等の国内外の研究機関等の誘致活動』とあるが、IAEAは原子力の平和利用を推進する機関であり、立場上は推進である。・・・原発に依存しないと宣言している福島県に推進機関を誘致することは矛盾しないか。IAEAとしても戸惑うのではないか」(検討委員会委員で岩瀬会津大理事の質問)
「IAEAの誘致については、広く放射能に汚染された県土の除染に関する、より高度な研究等を行うとともに、その成果などを世界へ向けて発信することを目的としている」(県当局の答弁)〔*45〕

 IAEAは、原子力推進機関の総本山だ。
 他方、福島県は、昨年8月策定した「福島県復興ビジョン」において、「今回の原子力災害で最も深刻な被害を受けた福島の地においては、『脱原発』という考え方の下、原子力に依存しない社会を目指す」〔*46〕と明記した。県民の思いを反映したものだ。
 ところが、その福島県当局が進んで、福島県をIAEAの拠点にしようとしている。
 この福島県当局の姿勢を見過ごすことはできない。


 ▽ 原発誘致以来の一貫した問題


 かつて福島県は、原発の誘致の際にも、県の側から積極的に動いた事実がある。福島県当局が、原発誘致を公表するのは1960年5月。しかし原発誘致の動きを秘密裏に進めていた。
 当時の県職員が次のような文章を残している。
 「(佐藤善一郎)知事は三十二年(1957)八月知事に就任する早々、相双地区の開発に目を向けていた。・・・研究のすえ、この地区の開発には原子力による電源開発が最適と判断し、三十三年(1958)当初から、ひそかに企画開発部に命じて、立地の適否について検討をさせた。・・・当時としては、原子力といえば原子爆弾も同じものと考えられていたので、調査には慎重を期し、同時に知事の政治生命にもかかわる一大事業と目された。・・・知事は自ら堤社長(西武鉄道社長。当時。大口の土地所有者)に会い、かなりの確信を得たようであった」〔*47〕
 そして1960年5月に原発誘致を公表すると、県開発公社が、東京電力に代わって、用地買収に動いた。大熊町や双葉町の住民は、土地買収問題が浮上してようやく原発誘致のことを知る。県や東電の記録では反対などなかったとされているが、事実と違う。例えば双葉町郡山地区では、当初、地区の大多数が反対で、高利貸しの家の2軒だけが賛成だった。大熊町夫沢地区では、原発敷地と国道6号線を結ぶ進入路の建設にたいして、測量用に打たれた幅杭を住民が抜いてしまうという抵抗もあった。
 しかし大口の土地所有者が堤であったこと、県が事前に秘密裏に決めてしまっていたこと、土地買収においても、県が動いて脅しと買収で抵抗を潰して行ったというのが事実なのだ。
 さらにいえば原発だけではない。只見川流域の電源開発以来、新産業都市指定など、県民を犠牲にしながら開発を追求してきたのが福島県の当局の歴史だ。
 そういう全歴史の到達点が、2011年3月の原発事故なのだ。
 いまこそ、この負の歴史を厳しく反省し、県民の批判に向き合うべきではないか。
 ところが、福島県当局は、むしろ県民の批判に対して一層、硬直的になり、追い詰められ、そこからの救いを、IAEAという原子力推進機関に求めた。それは、さながら崩壊直前のソ連の対応である。
 福島原発事故は歴史的な事態であり、であるがゆえに、日本全国はおろか全世界の人びとが、福島から何が発信されるのかに注目している。その福島から、福島県は、IAEAにすがって、「放射能との共存」を発信するというのだ。
 こういう福島県当局のあり方が、非難もされずにまかり通るなどということは、被災地の責任において、許してはならないだろう。福島県民は、IAEAの福島閣僚会議にたいして、自らの態度をはっきり示す必要があるだろう。


【了】



   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



【参照引用注】




〔*40〕 外務省HP 「我が国の外交政策大綱」1969年作成/2010年公開
〔*41〕 『終わりのない惨劇 チェルノブイリの教訓から』 ミッシェル・フェルネックス他 竹内雅文訳 緑風出版
〔*42〕 ⇒〔*41〕
〔*43〕 日本財団会長 笹川陽平ブログ
〔*44〕 福島県ホームページ 知事記者会見録 欧州訪問について
〔*45〕 福島県HP 第2回復興計画検討委員会における意見と対応について
〔*46〕 福島県ホームページ 福島県復興ビジョン
〔*47〕 『水は流れる 佐藤善一郎』 佐藤善一郎伝記刊行会








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テーマ:「原発」は本当に必要なのか - ジャンル:政治・経済

  1. 2012/12/12(水) 09:00:00|
  2. IAEA・ICRP
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
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コメント

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  1. 2012/12/26(水) 06:20:04 |
  2. |
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感想

労作です!IAEAが早期に福島と関わりを持とうとした意図が簡潔に整理されていて、大変に為になりました。ありがとうございます。隣県から活動を応援するとともに、反原発の活動を目に見える形で持続的にやっていかねばと思いました。
  1. 2012/12/29(土) 21:35:57 |
  2. URL |
  3. 高橋正芳 #a3hBVw6g
  4. [ 編集 ]

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このコメントは管理人のみ閲覧できます
  1. 2012/12/31(月) 11:39:39 |
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