福島 フクシマ FUKUSHIMA

津波被害と原発震災に立ち向かう人々とともに

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福島原発事故の責任をただす   福島で告訴団

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(県内各地から参加があった「福島原発告訴団」結成集会。壇上で報告をするのは、いわき市議の佐藤和良さん   3月16日 いわき市内)



 「どうして、これほどの事故を起こしながら、検察による取り調べがないのでしょうか?疑問と怒りが、胸の奥からわき上がってきます」  (告訴団リーフレット)

 福島原発事故を引き起こした責任者たちの刑事責任を追及する動きが、福島で始まっている。
 三春町の武藤類子さんやいわき市の佐藤和良さんらを中心にして、3月16日、いわき市内で、「福島原発告訴団」が結成され、これを皮切りに、4月6日・郡山市、9日・福島市、12日・南相馬市、19日・白河市、29日・三春町と各地で説明会が進められている。
 6月11日の福島地方検察庁への第一次集団告訴を目指して、告訴人への参加が呼びかけられている。
 詳しくは、福島原発告訴団のウェブサイトを見ていただきたい。
 URLは⇒
 http://kokuso-fukusimagenpatu.blogspot.jp/


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(写真上 呼びかけ人としてあいさつに立つ武藤類子さん 
3月16日 いわき市内)

(写真下 弁護団の一人、保田行雄弁護士 3月16日 
いわき市内)
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(写真下 弁護団の一人、河合弘之弁護士 4月12日 
南相馬市内)
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 以下に、3月16日のいわき市と4月12日の南相馬市で行われた河合弘之弁護士の提起を整理して掲載する。
 河合弁護士は、脱原発弁護団全国連絡会代表、浜岡原発差止訴訟の弁護団長などで活躍している。
 河合弁護士は、「これだけの重大事件で、誰も刑事責任が問われないのはおかしい」「連中は、個人責任を突きつけられないと、身に染みて反省しない」と問題提起し、この集団告訴が、「福島の人たちが立ち上がっていくため」のものであり、ひいては「原子力ムラを解体し、日本社会を変える」という「壮大なたたかいの一歩」だと訴える。集団告訴を大衆運動として進める具体的なイメージも出され、会場全体が、「これはやれる」という気持ちになった。
 


   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
 


【Ⅰ】  誰も咎められない異常



 河合です。脱原発弁護団全国連絡会をつくりまして、その代表を務めさせていただいております。
 やはり、これだけの重大な事故を起こして、これだけの人に多大な被害を与えながら、誰も刑事責任を問われないのというのはおかしいと、私は、ずっと感じておりました。
 たとえば、雪印の事件。高々、賞味期限が過ぎていたという話。でも、あの事件では、すぐに押収捜索がおこなわれ、社長は追い落とし、そして逮捕・起訴という風になっている。
 オリンパスの事件。これも、判明してから、一カ月で押収捜索、二カ月で逮捕・起訴。オリンパスだって、高々、お金がどっかに消えたという話ですよ。
 でもね、福島の事件は、そんな事件ではないんじゃないですか。なのに何で、刑事責任が問われないのか。おかしいですよね。
 責任者が、ずっといい加減なことをやってきて、ああいう事故を起こした。ところが、その人たちが、いまも、原発の行政をやっていて、あるいは原発にかかわっていて、誰も変わっていないのです。
 例えでいえば、こういうことです。第二次世界大戦が終わりました。はい、何にもお咎めなしで、東条英機とかが、「諸君、いまから日本の再建に力を合わせてやろう」って、言っているのと同じなのですよ。
 そんなことやったら、「ばか言うんじゃないよ。おまえら、こんなにひどいことをしておいて、よくそういうことをいえるな」って言いますよね。
 それと同じことが、いま日本で起きているのですよ。全然、スタッフ変更なし。誰も変わっていないじゃないですか。清水社長はあまりに無能だから、再選されなかっただけ。    
 そんな社会現象って、他に例がありますか?
 日本というのは、そもそもいろいろおかしいことがあるけど、まあ、良い国。だけど、原発の世界だけは、本当に変なことがまかり通っているのです。それがいままで見えていなかったけど、事故で全部、噴出してきた。
 だとすれば、やっぱり、間違ったことをやった奴は、退場にしないと。そして、人心を一新して、「この災害から立ち直ろう」というのが本来のあり方ですよね。
 この日本では、正義は行われないのか。本当にそう思います。


再稼働させたい原子力ムラ


 刑事責任を問うことは、本当に重要です。個人としての刑事責任を問わないと、彼らは反省しないのですよ。身に染みない。だから、国民の大半が「原発をやめてくれ」と思っているのに、再稼働への策動がやまないわけです。
 では、何で再稼働なのか。僕も、不思議で、不思議で仕様がない。みなさんも不思議で仕様がないでしょう?こんなにひどい目に合って、国民の大半が、「原発、もうやだよね」って言っているときに、なんで再稼働やろうとすんだよ。
 でも、これには、ちゃんと理由がある。
 日本の中枢部には、原発を絶対に再稼働させたいという勢力がいて、それに群がる原子力ムラというのがある。
 ムラという言葉のイメージは、ひとつは小さい、ひとつは素朴だ。でも原子力ムラは、その二つに当てはまらない。ものすごく巨大で、全然、素朴ではなくて、すごい利権集団。
 それをいまから図(写真下)に書きます。図に書くと、あまりに強大でガッカリしてしまうかもしれないけど。真実から、やっぱり目を背けてはいけない。


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(原子力ムラを図示  4月12日 南相馬市内)


 【電力会社】がいます。【役人】がいます。それから、送電線から何から、設備を一手に引き受ける【ゼネコン】がいます。もちろん、東芝やIHIなどの【メーカー】がいます。意外と知られていませんが、【商社】です。三菱商事などの総合商社は、ウラン・石炭・天然ガスなどの発電の燃料を買い付けています。また、【メディア】は、電通や博報堂を中心に全部、広告料で組織されています。それから、【地方自治体】です。そして、これらの全体に融資するのが、【銀行】です。【御用学者】も研究費をもらうために、「原発は安全ですよ」とやります。
 これらが、日本経済の7割を占めている。そういう利権構造です。
 これを解体しなければ、日本を良くできない。本当に僕はそう思いますよ。


個人責任つきつけ恐怖させる


 そのためには、どうしたらいいか。刑事告訴ということが必要なのです。
 たとえば、再稼働するときに、最終決定するのは誰だと思いますか?政府だと思いますか?違います。最後は、個別の電力会社の取締役会で、再稼働するかどうかを決める。  
 そのときに、「いい加減なことをやって、事故が起こしたら、刑事罰が来るな」って、恐怖すること、これが大事なのです。変なことをやったら、お縄頂戴になる。それが個人責任を目覚めさせるのです。
 でも、実は、お縄頂戴だけでは、なかなか駄目なのです。なぜなら、権力が守ってくれるから。
 そこで、大事なのは、今日はテーマに挙げませんけど、株主代表訴訟です。僕は、いま、刑事告訴とともに、株主代表訴訟に力を注いでいます。
 株主代表訴訟というのは、取締役にたいして、義務を怠って、事故を起こして、損害を発生させたら、個人的に弁償させるという制度です。
 僕は、この訴訟を、3月5日、東電の株主42人とともに起こしました。
 請求金額が、5兆5045億円。これは世界新記録。ギネスブックにこれから申請しようと思っている。
 いま、この訴状が、東電の役員のところに、送達されている。役員の家ではどういうことが起きているか。「お父さん、こんなの来たわよ。5兆5千億とか書いてあるけど、大丈夫?せっかく豪邸を造ったのに、捕られちゃうわよ」って、家庭内で不和が起きている。そうやって恐怖させないと、彼らは、自分の頭で考えない。
 僕は、この訴状を、関西電力の役員にも送りつけた。 「お前ら、いい加減なことで再稼働して、事故を起こしたら、同じ目に合わせるぞ」って、警告書をつけて送りましたから。
 それも、たぶん、物議を醸していると思います。


日本社会を変える


 要するに、責任者の個人責任を問う手段として、この告訴をする。告訴をすることによって、個人の責任を自覚させて、原子力ムラを解体していく。原子力ムラを解体できて、悪いことができないようにすれば、日本はよくなるのですよ。
 この集団告訴は、そういう壮大なたたかいの一歩なのです。
 「いやあ~、起こってしまったことだし、人間、許してあげなくては。許しからすべては始まるんだ」なんて甘っちょろいことを言わないで、悪いことをした奴は、徹底的に追いこむことによって、個人責任ということが芽生えるのです。
 日本は、組織の後ろに隠れて、悪いことをする匿名社会。この匿名社会を変えなければ、日本は良くならないし、原発もなくならないし、原発被害はなくならない。そこを是非、ご理解をいただきたい。
 悪いことをしたやつらが、何にも処罰されないままで、福島の人たちが、立ち上がれますか?立ち上がれないですよね。「やっぱりそうか、あいつがちゃんと罰せられた。じゃあ、おれたちも本気で頑張ろう」ということになるわけじゃないですか。
 だから、是非、この刑事告訴というのを、単に腹いせと考えないで、これから福島の人たちが立ち上がっていくための、福島が立ち直っていくための、重大なステップボードになるのだということを理解して、運動を開始していただきたい。
 是非、みなさんの広範囲の結集をお願いしたいと思います。



【Ⅱ】  福島地検に集団告訴



 では、刑事責任を、どういう風に追及したらいいか。
すでにご存じのように、広瀬隆さん(作家)や明石昇二郎さん(ルポライター)が、この福島原発のことで、東京地検に刑事告訴をしています。
 罪名は、業務上過失致死傷罪です。原子力安全保安院とか、原子力安全員会のトップの連中は、もちろんのこと、勝俣、武藤、武黒という東電のトップを連中を告訴しました。
 しかし、それは、たぶん、ろくに検討されることもなく、東京地検の棚に放り込まれたままになっていると思います。
 僕は、広瀬さん、明石さんのやったことは、正しいと思うのですけど、方法がいまいち迫力が足りないと思うのですね。
 僕が、みなさんに提案したいことは、告訴先が東京地検ではだめだと、福島地検でないとだめだということです。
 東京地検というのは、行くとわかりますけど、すごく立派なビルで、暖かくて、ぬくぬくと仕事ができる場所です。東京地検で働いている検事は、エリートです。「東京地検の特捜の検事になるのが検事の目的だ」という人が多いぐらい、エリートコースです。家族は、安全な官舎に住んでいる。そういう人たちに訴えても駄目なのです。
それから、彼らは、もともと、原発関係者のことを、国策に協力した人たちと見ていますから、手ぬるいのです。
 だから、福島地検に告訴しないとだめです。福島地検の検事は、仕事が終われば生活者です。毎日、被ばくしています。女房もいれば、子どももいる。福島に住んでいる。家に帰ったら、「お父さん、うちの子、大丈夫かしら」と嫁さんに聞かれます。「俺の子ども、大丈夫かな、3歳だけど。こんなときに被ばくしたら、ヤバイよな」。そういう被害者としての意識を、共有しているに違いないのです。そういう人たちに、告訴しないといけない。
 告訴する先が重要だと思うのですね。


住民が大挙して押しかける


 次に大事なのは、誰が告訴するかということです。
 一人や二人のエリートや著名人が告訴しても駄目です。福島の何千人・何万人という被害者が、みんなで力を合わせて告訴をすればいいのです。被害者である皆さんが、「どうしてくれるんですか、こんなことになって。こんなことを起こして、だれも罰せられないなんて、おかしいじゃないですか」。
 こういう風に、みなさんが力を合わせて告訴することです。
 僕は、連名で最低3千人は集めてほしいと思います。
 3千人の告訴人が、告訴状を出したら、それは、なかなか無視できない。
 しかも、その人たちは、被害者だ。ほんとに苦しんでいる。そういう被害者の方々を中心に据えるのがいいと思います。
 しかも、ただ、告訴状を弁護士がポッとだすだけではなく、何人もが地検に押しかければいいのです。地検に押しかけて、「どうぞ、告訴を受理して下さい。どうぞ起訴して下さい」ということを懇願すればいいのです。毎日、毎日、行って懇願すればいいのです。
 もうひとつ、提案があります。
 やっぱり、メディアの注目を集めないといけないから、人の鎖で、福島地検を囲めばいいのです。「起訴しろ」って、叫べばいいのです。
 そうすれば、絶対にメディアは注目をしてくれます。
 検察官の生き甲斐は、「被害者とともに泣く」ということです。まさにみなさんは、被害者だ。被害者が、「いっしょに泣こうじゃないか」「捕まえて、起訴してよ」。こういう風に、人の鎖で囲んで訴えれば、僕は非常にいい結果が出るのではないかと思います。


検察審査会でも


 そうはいっても相手は権力です。
 権力の中にいる人は、権力の側の人を守ります。原則として。ただし、ちょっと例外があって、汚職には大変厳しいです。
福島の事件においては、安全安心キャンペーンが染み通っていて、それから、「国策に協力してこうなったのだから、仕様がないんだよな」という風に、検事は、基本的には思っていると思います。だから、簡単に逮捕・起訴してくれるとは思えない。僕も、たぶん可能性としては、5分5分か、6・4で不利かなと思います。
 でも、不起訴になっても諦めることはないのです。検察審査会に申し立てをすればいのです。検察審査会の審査員が、討議するわけですけど、その審査員も、福島県民です。被害者です。だから、「これで、無罪放免なんて、とんでもないよな」って思うように、また、デモをかけたりして、いろいろ働きかければいいのです。審査員のメンバーが誰なのかは、なかなかわかりませんけど、そういう世論を盛り上げていけばいいのです。
 こうして、検察審査会が、「起訴相当」といって地検に返します。地検が、また「やっぱり不起訴だよ」となったら、また検察審査会に申し立てをすればいい。また、起訴相当で送って、もう一度、検察側が不起訴にしたら、強制起訴という手段があります。
 これは、ご存じの通り、小沢一郎氏のケースがそうですね。そこまでもっていけばいい。そこまで持っていくつもりで、刑事告訴しようではないかというのが、私の提案です。


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(河合弁護士 3月16日 いわき市内)

【南相馬での講演の後、河合弁護士に、「なぜ脱原発の道に入ったのですか」と訊いてみた。河合弁護士によれば――バブルの時代には儲かる仕事をたくさんやったが、それが空しくなっていたところに、故・高木仁三郎氏との出会いがあり、この道に入った――ということだ。また、東電の勝俣会長とは、東大卓球部の先輩・後輩の関係で、先輩である勝俣氏からは、「反原発になりやがって」と言われているという。こういう世界を経験してきた人が、いま、原発事故の責任者たちを舌鋒鋭く攻撃している。】



【Ⅲ】  刑事告訴の論点



「人の生命・身体に危険を生じさせた」―公害犯罪処罰法


 では、この刑事告訴の論点は何かということです。
 この事件に一番ふさわしいのは、「公害犯罪処罰法」という法律です。
 その第三条に、「業務上必要な注意を怠り、工場又は事業場における事業活動に伴つて人の健康を害する物質を排出し、公衆の生命又は身体に危険を生じさせた者は、二年以下の懲役若しくは禁錮又は二百万円以下の罰金に処する」
 第二項で、「前項の罪を犯し、よつて人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は三百万円以下の罰金に処する」
 こうある。これは読んで字のごとしで、仕事上の必要な注意を怠って、工場・事業場、つまり原発のサイトですね、そこにおける事業活動にともなって、人の健康を害する物質、これは放射能がまさにそのものですね、それを排出して、公衆の生命ないし身体に危険を生じさせた者は・・という構成要件です。
 「人の生命・身体に危険を生じさせた」だけでいいわけです。だから具体的に怪我したとか、死んだとかという結果はいらない。公共危険罪というのですけど、危険を発生させるだけで、その結果はいらないのです。

◇「事業活動にともなって」

 いまこれを読むと、「まさにこれだよ」と、みなさん、思いませんか?思いますよね。
でも残念ながら、これは、駄目なのです。東京地検は、「駄目だ」といったのです。
この罪刑で、岩手の人たち〔三陸の海を放射能から守る会〕が東京地検に今年の1月24日に告訴したら、「はい、残念でした。駄目ですよ」と、数日後に返事が返ってきたという話です。
 これはどういうことを意味しているかというと、彼らも事前に検討していて、「こういう告訴が来たら、すぐにハネちゃおうな」って、法律的な研究をしていたということです。
 その理由はどうかというと、「事業活動にともなって」というのは、たまたま起きたような事故で毒物を出すようなのは、当てはまらないというのです。たとえば、水俣でチッソが有機水銀を長期間にわたって排出した。公害犯罪処罰法は、そういうのを罰するためにできた法律で、一回的な間違いで毒物が外に出たというのは、業務上過失でやるというのです。「これは当てはまりません。はい、残念でした」ということです。
 ということで、あきらめて方向転換しようというのも、ひとつの考えです。
 たしかに東京地検が依拠する判例があって、アエロジル事件という事件ですが、タンクで運んできた材料を、Aというタンクにいれなければいけないのに、Bというところに入れてしまって、急激な化学反応が起こって毒ガスが発生、周りの住民が被害を受けたという事例です。この場合、「事業活動にともなって」に当たらないという判決です。東京地検は、それを引用して、「今回の福島原発の事件は、アエロジル事件と似たようなものだから、当てはまりませんよ」といってきたわけです。
 だけど、僕は、それは、違うと思うのです。
 事業活動の中で、放射能を扱っていて、「危ない状態になったら、ベントするよ」ということも、あらかじめ決まっていたわけです。ちゃんとベント管もあって、そこに流して爆発を防ながければならなかったのだけど、そこに流すタイミングが遅くなったから、放射能がいっぱい出たというのが本件の真相なのですね。だから、それは、たまたまではなくて、「事業活動にともなって」ではないか。事業活動と関係ないところで、たとえば、燃料棒を運び込むときに、間違って落として引火しちゃったというならともかく、事業活動の中で、発生している。だからこれは、「事業活動にともなって」だという主張も、簡単に引っ込めるべきではない。
 僕は、告訴する場合には、それを第一の主位的な訴因にするのがよいのではないかと思っています。
 それが、公害犯罪処罰法で、告訴する場合の法的な問題です。


「被ばくは傷害罪」―業務上過失致傷罪

 
 二番目に、古くからある業務上過失致傷という犯罪で告訴するという方法もあります。これがオーソドックスで、人を傷つけたら何年という罪ですね。
 その場合、傷害があるのかという問題です。
 本件の一番重大な問題は、多くの人を大量被ばくさせたということです。放射能被ばくというのは、被ばく自体が傷害になるかという法律的論点を含んでいる。
 僕は、この事件の本質は、多くの人に大量に被ばくさせたことだと思うから、そこを犯罪としてとらえないと、なかなか迫力がないと思っています。
 被ばくは、遺伝子を分断させたり、免疫力を落としたり、うつ病にさせたりするわけですから、「被ばく自体が傷害だ」という主張を押し通していかないといけないと思っています。
これには、「被ばくした結果、なんの傷害を受けたの?」と反論される恐れがあります。
 ただ、「被ばくは心配かもしれないけど、傷害じゃないよ」と言われたとしても、他にも具体的な被害が出ているわけです。たとえば、原発事故からの避難で、老人ホームの人たちがたくさん亡くなっている。それから、「原発さえなければ」といって、自殺した畜産農家の人がいます。それ以外にも、原発の現場で作業員が2人、亡くなっています。これらは、相当因果関係内の死亡だと私は思います。
 ただ、これらのことをもって、この事件の本質とは言えないです。やはり、この事件の本質は、放射能を大量にばらまいたということです。


「規則を守る」と「安全を守る」は別


 三番目の論点としては、当然ありうる言い逃れとして、「東電は、政府の決めた安全基準を守っていたのだから、過失はないんだよ」というのがあります。
 「自分たちは、原発の設置の認可もちゃんと取った。安全基準もクリアした。安全審査基準を守って運転していた。すべての基準を守っていた。何か悪いことをしたんですか?」東電の連中は、こういう言い逃れを現にしています。
 これを突破するのは、こういう論理が必要だと思います。例えば、カラオケ屋で、消防法を守って、消火器を置いて、スプリンクラーもつけていた。でも、いい加減なことをやってストーブが転がって火事になり、客が死傷した。こういう場合、やっぱり業務上過失致死傷で訴えられるわけです。
 だから、「取締規則や安全基準を守るというのは最低限の話であって、それを守っていたからといって、無罪放免になるわけではないですよ」ということです。道路交通法を守っていたら、交通事故を起こしてもいいのかということと同じですね。取締規則を守ることと、安全を守ることとは、別問題だということをキチンと押さえないといけない。
 しかし、この反論は、なかなかしぶといものがあるとは思います。


「想定外」のウソ


 それから、4番目の論点としては、「異常に巨大な天災地変による被害なんだから、責任ないんだ」ということを言うと思います。いわゆる「想定外」です。
 「想定外だ」ということは、初めから今でも言っていますね。
 東電の監査役などが言っていることですけど、「基準値震度をはるかに上回る規模の地震が来て、それによって、基準をはるかに上回る津波がきた。それが、今回の事故の原因のすべてだ。だから仕様がないのだ。想定外だから。俺たちだって天災地変の被害者だ」というのが、東電の連中の基本的な立場です。
 これにたいしては、「それはちがうでしょう」と――。
 津波で言うと、何が想定外だ。あなた方は、6.1メートルしか想定していなかったけど、あなた方の内部の研究〔08年春に出された明治三陸地震(1896年)等をもとにした試算〕では、15.7メートルの津波が来るかもしれないという研究結果が出ていたではないか。それを外部にも発表し、内部でも、吉田氏〔原子力設備管理部長(当時)、後に第一原発所長〕、武藤氏〔副社長・原子力立地本部長(当時)〕、武黒氏〔副社長・原子力立地本部長(当時)〕に報告が上がったでしょう。だけど、あなた方はそれを握りつぶしたではないか。
 そういう明らかな証拠がある。それは政府事故調の中間報告書に書いてある。


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(東電内の試算とその握りつぶしを図で解説  4月12日 南相馬市内)


 どうやって握りつぶしたかというと・・・。
〔図(写真上)を指しながら〕ここに東北地方があって、日本海溝があって、三陸沖がって、房総沖があって、福島沖がある。三陸沖で大きな地震〔1896年〕が起きているのですよ。この地震が、福島沖で起きたら、どれくらいかという計算をしたのです。その結果、15.7メートルと出ています。
 普通なら、びっくりして何とかしようと思いますよね。ところが、武藤氏や吉田氏はなんて言ったかというと、「福島沖で起きたわけじゃない。三陸沖の地震を福島沖にもってきたことについて、妥当性に疑問がある。単なる試算、試しの計算だから、そんなことでいちいち大工事なんかやってられない」というので、握りつぶしてしまった。
 でもね、オホーツクとか、チリ沖とかの地震を福島沖にもってきて試算したのならともかく、日本海溝の中では連動しているのですよ。地震を三陸沖から福島沖に持ってきたということは、日本海溝の三陸沖で地震が起きたら、福島沖でも起きるだろうということです。だから、不当な仮定ではないのです。
 「いいかげんな仮定だから」というけど、自分の身内にやらせておきながら、「いいかげん」もないもんだと思うだけど、そういうことで握りつぶした。
 ただ握りつぶすということだけだとヤバいから、土木学会に「もうちょっと調査していただけませんか」とか、「津波堆積痕をもうちょっと調べて下さい」と、人に荷物を預けておいて、放って置いた。それから3年がたっている。それでドーンと来たのですよ。
 だから、一事が万事で、想定外でもなんでもなくて、「こういう危険があるぞ」「ああいう危険があるぞ」「これもあるぞ、あれもあるぞ」と、ダァーと警告の連続だった。それを全部、握りつぶした。
 だから、吉田所長〔昨年11月退任〕は、英雄のように言われているけれど、たしかに、あの事故が起きてからは、英雄的に振る舞ったかも知れないけれど、その前の握りつぶしの張本人が彼なのです。だから、彼を決して英雄視してはいけない。
 彼が、あそこで、「わかった」と、「じゃあ、ヤバいから、防波壁をつくろう」とか、「非常用ディーゼル発電機を1機だけでも高いところにあげておこう」とか、「水密化しておこう」とか、「こっちがやられたら、連携をちゃんとしておこう」とか、何千億円もかからない、何十億でできる方法がいくらでもあったのに、なんにもやっていない。「それがなんで想定外なんだよ」ということをこれから追及していかなければならない。


いかに立証するか


 5番目の論点は、こうやって私が言っていると「もっともだな」と皆さん思うでしょう。思うけど、実際、そんなに甘くはない。
 具体的な過失というのを、とらえていかないといけない。「ここで、こういう風に見落としただろう」、「こうやってサボっただろう」、「こうやって間違いをしただろう」、「だからこういう事故になって、こういう被害が出たんだよ」ということを立証しないと、刑事事件として立件されないのです。また、立件されても有罪にはならない。
 これは、非常に、困難な作業です。というのは、情報は全部、あっち側が握っているのです。だから、普通だと、こっちは言うだけで、あっちが証拠を全部、握り潰してしまえば、それで終わり。

◇政府事故調「中間報告書」

 ところが、そうは問屋が卸さないので、僕らが一番、頼りにしているのが、政府の事故調、畑村さんが委員長をやっている政府事故調査・検証委員会「中間報告書」。あれにかなりくわしくいろいろな問題点が書いてあります。
 去年の12月26日に発表されたのですけど、畑村さんの立場は、「責任追及が目的ではない。真相の究明が目的だから、責任追及はしない」と言って、具体的な問題を伏せてあるんですけど、それでもかなり具体的な過失がわかる。
先ほど言った15・7メートルの話も、ちゃんと出ている。
それから、IC〔Isolation Condencer 非常用復水器〕といって、緊急冷却装置があるのですけど、その操作方法の基本の基本を誰も知らなかったという過失。そのために、当日、大変な時間をロスし、そのために炉心が露出して、溶融が始まって、放射能が充満して、ベントせざるを得なかった。そのために、放射能が大量に放出されたのだということも書いてある。
 したがって、ひとつは、政府事故調の報告書に依拠するという方法がある。

◇東京電力・事故調査中間報告書

 もうひとつは、政府事故調の報告書の前の昨年12月2日に、東京電力の事故調査・中間報告書を出している。
 これは、自己弁護と隠ぺいの塊みたいな報告書です。「史上4番目の地震によって起こった史上最大の津波だ。だから仕様がないんだ」って書いてあり、もうひどいものなのです。でもさすがに、それだけでは済まないと思ったのでしょう。今後の改善点ということが書いてある。
 でもね、改善点というのは、別の言葉でいうと、「手抜かりがあったから、こういう風に改善しますよ」というところです。そこを読むと、やっぱり東電の怠慢を捕まえることができるのですね。

◇国会・事故調査委員会

 3つめが、いま、進行中の国会の事故調査委員会(黒川清委員長)による調査報告。これが6月の末に出ますけど、これは、なかなか良い布陣で、私たちの信頼する科学者も入っており、かなり厳しい報告書が出ると思います。
 その報告書の一つの焦点が、今度の福島原発のシビアアクシデントというのは、本当に津波だけで起きたのかどうか、津波の前に、すでに地震で重要な配管の破断が起きていたのではないか、という疑問です。こういう疑問を田中三彦さん〔科学評論家 国会事故調委員〕が呈していて、非常に科学的な分析をしている。これにいて、政府事故調の畑村報告書では、「一応、そういうこではないのではないか」と否定的な見解を示されているですが、田中三彦さんは、「いや、そんなことはない。この説が正しいのだ」ということで、一所懸命、論証をしているところです。
 国会事故調は、東電に非常に厳しい、批判的な学者もいっぱい入っていますから、東電側にとって、かなり厳しい報告書になるだろうと、期待しているところです。


世界平均の130倍の地震


 株主代表訴訟の訴状を見て下さい。こういう訴状が日本でできたのは初めてです。
 これまでも、原発を差し止めるための論理を一所懸命、構築してきました。例えば、浜岡で言うと、「マグニチュード8強の地震が、30年以内に88%の確率で来るぞ」と。
その場合に、「地震波を一番、強烈に出すところを、浜岡の原発の直下に想定しろ」、しかも、「浅い部分に想定しろ」というような議論をしたり、「中性子による脆性破壊〔金属強度が劣化する現象〕が進むぞ。だから原発を止めろ」という論理をずっとやってきたわけです。
 ただ、事故が起きてしまってことにたいして、ここが悪かったのだという追及をしたことはないのです。だけど、初めてそういうことをしなければならなくなった。
 そこで、政府事故調の報告書や新聞記事、あらゆる資料を集めて、「何がいけないのだ」というところで、書き上げたのがこの訴状です。
 一番に強調したいのは、世界の地震の分布図です。
 これを見ると、日本は、真っ黒で見えないくらい、日本は地震が強烈なのです。
もうすこし数字的に言うと、日本は、世界の面積の0・3%しかない。その0・3%の国土に、世界中の地震の10%が集まっています。単純に計算して33倍。測り方によっては、日本は、世界平均の130倍の率で地震が発生しています。
 アメリカの東海岸は全く地震がない。それから、フランスやドイツも全然ない。
 要するに、結論として、地震がいっぱいあるところで、原発をやっているのは日本だけだ。だから、日本だけは、絶対に原発をやってはいけない国なのです。他の国は、まあ勝手にしろと。だけど日本だけは絶対にやってはいけない。
 なんでやってはいけないのか。原発は、巨大精密機械だからです。僕は、原発にもぐりました。浜岡の原発に現場検証に行きました。でっかいですよ。配管が、ワーと張り巡らされていますよ。やたらと、スイッチとIC〔集積回路〕があります。
 精密機械は、衝撃と水に極端に弱い。例えば、携帯電話は、水につけたり、ガーンとたたきつけたりしたらアウトでしょう。それと同じです。だから、日本で原発はやっていけないのです。
 「そもそも原発をやっていたことがいけないんだよ。それが、過失の第一だ」というのが、この訴状に書いてあることです。
 この本質は、そこにある。最大の罪は、日本で原発をやったことなのです。
 だけど、刑事事件で、それだけでやろうとしても、検事はなかなか動かない。でもやっぱりそういうものなのだということをまず分からせる必要があると思います。

 刑事告訴の論点は、だいたい以上です。
 ともかく、これだけの重大事件で、誰も刑事責任が問われないのはおかしい。連中は、個人責任を突きつけられないと、身に染みて反省しないのです。この集団告訴は、個人責任を追及し、そうすることで、福島の人たちが立ち上がり、そして、原子力ムラを解体し、原発をなくし、日本をよくするたたかいの一歩です。是非、そこのところをご理解いただき、多くの方にご参加していただきたいと思います。  (了)







 
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  1. 2012/04/18(水) 14:50:01|
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