福島 フクシマ FUKUSHIMA

津波被害と原発震災に立ち向かう人々とともに

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【資料】  子どもに深刻な健康被害   ウクライナ小児科医の警告


チェルノブイリ子ども6
 (ウクライナの少女。心臓疾患を患い、手術を受けた。2011年4月/支援団体のサイトより)


 ウクライナで、放射能がもたらす子どもの健康被害の調査と治療に、長年とり組んできた、エフゲーニャ・ステパノワ医学博士が、12月11日、福島市内で、「チェルノブイリとウクライナの子どもたちの健康 ~25年の観察結果~」と題する講演を行った。                〔講演の主催は、国際環境NGO グリーンピース・ジャパン〕

◇慢性的な疾患

 博士が、講演の中で述べたことは、厳しい現実だった。
「チェルノブイリの子どもの健康状態には、かなり否定的な傾向が見られる。より幼い年齢の子どもが、複数の病気に同時にかかり、治りにくく、すぐに再発する慢性的な疾患の状態にある」という。
 一般に、被ばくによる影響は、ガンや白血病の増加として認識されている。
 しかし、チェルノブイリの現実はそれにとどまるものではなかった。子どもの慢性的な疾患が深刻な問題になっている。
 それは、事故直後の放射性ヨウ素による影響に始まり、事故から1~5年の時期の体調不良、3年後に見られる甲状腺ガンの増加、さらに6年後には様々な臓器の慢性疾患が増加するという衝撃の事実が、データをもとに報告された。
 また、事故処理に当たった作業員から事故後に出生した子どもに、先天性の障害が見られるという事実も指摘した。

◇日本の子どもも

 この事実に基づいて、日本における影響についても言及した。
 「日本の子どもたちの健康にたいする影響は、チェルノブイリの子どもたちに観察されるものと、同じようなものであるかも知れない」と指摘。
 取るべき措置として、「子どもたちは、放射能リスク・グループに入れるべきである。幼年期もその後も、常に医学観察の下に置かれるべきだ。その目的は、健康障害を防ぐこと、もしくは適切な時期を逃さず、健康障害を見つけるためだ」と提起している。
 また、「山下教授(現福島医大副学長)が『100ミリシーベルトまで大丈夫』と言っていることについてどう思うか?」という質問にたいして、「今日は論争のための用意はしていないので」と慎重な態度を取りつつ、「ウクライナでは、法律で、『1986年生まれの子どもにたいする追加被ばく線量は、年間1ミリシーベルト、生涯で70ミリシーベルトを超えてはならない』と定められている」と、結論は明快だった。

◇チェルノブイリの轍

 ところが、国も行政も、福島の子どもたちの避難・疎開を認めようとしない。このままでは、見す見す、福島の子どもたちが、チェルノブイリの轍を踏まされてしまう。
 ステパノワ博士とチェルノブイリの子どもたちの警告に真剣に向き合う必要がある。そして、福島の子どもたちの避難・疎開、食品の安全と医療の体制を実現するために、行動する必要がある。
 それが、ステパノワ博士とチェルノブイリの子どもたちが訴えていることだ。

・            ・            ・
  

 博士の講演は、用意された日本語のレジュメに沿いつつ、ウクライナ語を逐次通訳しながら行われた。
 以下の文章は、講演とレジュメをもとに、学術的な用語や表現を避け、できるだけ平易な言葉に直し、また、理解しやすいように整理と要約を加えて作成した。
 レジュメ風の読みづらさは残っているが、数字とともに、衝撃的な事実は伝わるはずだ。
 なお、作業の際に、ウクライナ政府・緊急事態省による報告書・「チェルノブイリ事故から25年 Safety for the Future」(2011年4月 ※)を参照し、必要に応じてデータを確認し、補強した。  
〔※「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワークによる翻訳資料がネット上にある。〕


IMGP1929_convert_20120101142859.jpg 
 
 エフゲーニャ・ステパノワ医学博士。ウクライナ放射線医学研究センター放射線・小児・先天・遺伝研究室長。
1962年から小児科医として勤務。72年にロシアのトムスク医科大学助教授、86年には同機関の学長。88年より現職。86年に起きたチェルノブイリ事故以来、子どもたちの健康問題にとり組み、88年から放射線関連の子どもの病気について研究、これまで5万人の子どもたちを検診してきた。チェルノブイリの子どもたちの93年から98年の医療記録データベースの作成にも貢献した。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



【Ⅰ】 住民の避難



●1986年4月26日深夜、チェルノブイリ原子力発電所の第4原子炉で爆発が起きた。26日の放射能レベルは、毎時100ミリレントゲン〔※〕に達した。
        〔※ レントゲン: 放射線の強さを示す単位〕

●そのため、チェルノブイリ原発から4キロ離れたプリピャチ市〔※〕の住民を避難させる決定がなされた。
 26日深夜、避難のために、1100台のバスと3本の列車が準備された。
 27日14時、プリピャチ市の住民の避難が始まった。
 3時間で、同市から4万5千人が避難、うち1万7千人が子どもだった。
        〔※プリピャチ市: かつてチェルノブイリ原発直近にあり、
原発労働者が多数居住していた街〕


●事故直後、チェルノブイリ原発から30キロ圏内の住民が避難した。

●事故の規模が明らかになるにつれて、30キロ圏内に加えて、汚染が555キロベクレル/平方メートル以上の地域からの移転が行われた。

●86年末までに、188の居住区域から11万6千人が移転。

●さらに93年末までに、全部で23万人が移転した。


プリピャチ市観覧車

プリピャチ市廃墟 
(写真上下とも、事故から25年目の現在も廃墟のままのプリピャチ市。2011年3月)



【Ⅱ】 汚染度による4つの地域区分



 事故当初の放射能状況に大きな影響を及ぼしたのは、半減期の短い放射性ヨウ素。その後は、半減期の長い核種。現在は、主にセシウム137。セシウム137は、総放射線量の90~95%を占めている。

●ウクライナでは、放射性セシウムの汚染度に従って、4つの地域区分が行われた。


汚染地図01


第1ゾーン 立ち入り禁止区域
 チェルノブイリ原発から30キロ圏
 1500キロベクレル/平方メートル以上

▼第2ゾーン 強制移住区域
 555キロベクレル/平方メートル以上
  =年間放射線量5ミリシーベルト以上

▼第3ゾーン 補償自主移住区域
 185~555キロベクレル/平方メートル
  =年間放射線量1ミリシーベルト以上

▼第4ゾーン 環境強化管理区域
 37~185キロベクレル/平方メートル
  =年間放射線量0・5ミリシーベルト以上

●ウクライナでは、法律によって、「1986年生まれの子どもにたいする追加被ばく線量は、年間1ミリシーベルト、生涯で70ミリシーベルトを超えてはならない」と定められている。
 第1ゾーン・立ち入り禁止区域は、100年間は、人が居住するには適さない。
 第2ゾーンから第4ゾーンに該当する居住区域は、時間の経過と放射性物質の崩壊によって、徐々に減少していく。



【Ⅲ】 4つのグループ分けと子どものカテゴリー



●ウクライナでは、チェルノブイリ事故の被災者を、登録のために、4つの住民グループに分けている。
・グループ1: 事故処理作業者
・グループ2: 強制避難および強制移住させられた住民
・グループ3: 汚染度の低い地域に住んでいる住民
・グループ4: グループ1~3の親から生まれた子ども
             

●被ばくした住民の中でも、特にリスクのあるグループは、子どもだ。
 理由は、成長・発達している体が、放射能にたいして、大きく反応するからだ。

●今回の報告では、チェルノブイリ事故が、下記のカテゴリーの子どもの健康にたいして与える影響を取り上げる。
     ⅰ: プリピャチ市と30キロ圏内から避難した子ども
   ⅱ: 汚染地域に居住している子ども
   ⅲ: 胎内被ばくの子ども
   ⅳ: 被ばくした親から生まれた子ども



【Ⅳ】 1986年 ヨウ素の危険性が高い時期の
    子どもの体の反応




●「立ち入り禁止区域」から避難した子どもが訴えた症状

▼喉がいがらっぽい、
  口の中で金属の味がする・・・   55.7%
▼疲れやすい・・・・・・・・・・・・・・・  50.1%
▼頭痛・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  39.3%
▼咳・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・    31.1%
▼首部分の痛み・・・・・・・・・・・・・  29.8%
▼めまい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・   27.8%
▼不眠・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  18.0%
▼失神・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・    9.8%
▼吐き気と嘔吐・・・・・・・・・・・・・・    8.0%
▼便通不順・・・・・・・・・・・・・・・・・    6.9%        

●体のもっとも典型的な反応

▼血液データの質的な変化・・・・ 92.2%
▼血液データの量的な変化・・・・ 34.2%
▼リンパ組織の過形成・・・・・・・・ 32.2%
▼呼吸器症候群・・・・・・・・・・・・・ 31.1%
▼心臓血管系の機能障害・・・・・ 18.0%
▼胃腸管の活動障害・・・・・・・・・   9.4%
▼甲状腺肥大・・・・・・・・・・・・・・・   6.8%
▼肝臓と脾臓の肥大・・・・・・・・・・  3.2%



【Ⅴ】 1987~91年 不調を訴える回数の増加


●事故から1~5年の時期、子どもたちが不調を訴える回数が増えた。

▼極度の疲労・・・・・・・・・・・・・・・・ 82.7%
▼衰弱・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71.1%
▼神経の不安定・・・・・・・・・・・・・・ 65.9%
▼胃腸の不調・・・・・・・・・・・・・・・・ 52.8%
▼頭痛・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52.0%
▼めまい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  40.3%
▼不眠・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29.6%
▼心臓付近の不快感・・・・・・・・・・ 26.4% 


チェルノブイリ子ども05 
(心臓疾患の手術を受けた少女。2011年4月 ウクライナ)

 
●臨床検査の際に、様々な器官の機能障害が見られた。 

▼動脈圧の不安定・・・・・・・・・・・・ 70.3%
▼免疫力の低下・・・・・・・・・・・・ 60~70%
▼肺の吸気機能障害・・・・・・・・・・ 53.5%
▼肝臓機能の一時的障害・・・・・・ 52.8%
▼心臓の機能変化・・・・・・・・・・・・ 40.0%
▼胃の機能障害・・・・・・・・・・・・・・ 39.6%
▼運動後の疲れやすさ・・・・・・・ ・ 31.5




【Ⅵ】 1989年から甲状腺ガンが増加



●ウクライナ医学アカデミーの内分泌・物質代謝研究所のデータによると、子どもの甲状腺ガンの疾患率は、事故から3年後の1989年から上昇が始まった。

▼90年~2009年まで、疾患例数は次第に増加。
▼09年の疾患例数・・・・・・・・・・ 463例
▼86年~08年までに同研究所で、
  甲状腺ガンで手術を受けた患者数
            ・・・・・・・・・・・ 6049人
▼その中の子どもと未成年者の割合
   事故当時、子ども(0~14歳)
            ・・・・・・・・・・・ 4480人=74.1%
   事故当時、未成年者(15~18歳)
            ・・・・・・・・・・・ 1569人=25.9



【Ⅶ】 1992年から機能障害が慢性病へ移行



 30キロ圏内から避難した子どもおよび、汚染地域の住民において、事故6年後の92年から、機能障害が慢性病に移行した。
 この傾向は、子どもが18歳になるまで見られた。

●最も悪い傾向を示しているのは、甲状腺に高い被ばく線量を受けた子どもたち。

▼甲状腺に2・0グレイ〔※〕以上被ばくした子どものうち、
  健康な子どもの割合・・・・・・・    2.8%未満

        
〔※グレイ: 放射線をあびた物質が、吸収するエネルギーの量を示す単位〕
 
●健康な子どもの割合が、86年から2005年で、大幅に減少。

▼86~87年・・・・・・・・・・・・・・・・ 27.5%
▼2005年・・・・・・・・・・・・・・・・・・   7.2%

●慢性疾患を持つ子どもの数が、86年から05年で、大幅に増加。

▼86年・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  8.4%
▼05年・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77.8%

●プリピャチ市から避難してきた子どもは、比較的汚染の少ない地域に住んでいる子どもに比べ、疾患率は、ずっと高い。2003年の健康管理システムによる調査で、疾患率は3倍に。

●89年から2003年で、下記の疾患が増加。

▼消化器官の疾患
▼神経系の疾患
▼血液循環系の疾患
▼呼吸器の疾患(慢性気管支炎・喘息・気管支炎)


チェルノブイリ子ども04 
(先天的な心臓疾患の子ども。支援団体から送られた縫いぐるみに喜ぶ。ウクライナ。2011年4月)



【Ⅷ】 食品による内部被ばくの影響


(一) 食品の内部被ばくへの関与

●農産物、乳製品、肉、魚などの食品を通して、セシウム137をはじめとした放射性核種が摂取され、内部被ばくが長期に及ぶ被ばく源が形成された。

●内部被ばくへの関与率は、食品がほとんど。

   ▼食品の関与・・・・・・・・・・・・・・・・ 98~99%

●内部被ばくに関与する食品の内訳

▼牛乳・・・・・・・・・・・・・・全被ばく線量の80% 
▼きのこ類・・・・・・・・・・・・・・・・   2~12.5%
▼肉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  5~10%
▼じゃがいも・・・・・・・・・・・・・・・・     5~6%
▼野菜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・    1~6%
▼魚・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・    1.2%
▼パン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  1~1.4%

 ジトミーロフ州、キーロフ州、ロヴェンスク州の個人経営農家では、汚染されていない乳製品を入手することは非常に困難。現在でも、緊急に解決を要する問題となっている。



(二) セシウム137による疾患


●セシウム137は、消化器の粘膜と臓器の実質器官(肝臓と脾臓)に直接、影響を与える。
 一日の食事量が不規則で、さらにセシウム137が体内に長期間にわたって摂取されることは、胃腸管の罹患率が、常に上昇し続けている原因のひとつ。

●汚染地域の子どもの消化器系の疾患は、明確に増加している。
 汚染度が555キロベクレル以上の強制移住区域に居住している子どもは、汚染の少ない地域に居住している子どもと比較して、下記の病気が、より多く確認された。

▼血液系の障害・・・・・・・・・・・・・ 2.5倍
▼肝臓組織の筋腫化・・・・・・・・・ 2.3倍
▼呼吸器の疾患・・・・・・・・・・・・・ 2.0倍
▼免疫の障害・・・・・・・・・・・・・・・ 1.8倍
▼自律神経血管機能の障害・・ 1.52倍



【Ⅸ】 胎内被ばくの影響



 「プリピャチ市から避難した妊娠女性から生まれた子ども」、「強制移住地域(555ベクレル以上)に残った妊娠女性から生まれた子ども」について、胎内被ばく(胎児のときの被ばく)の影響を評価した。
 その結果、以下のように、胎内被ばくの影響が見られた。

●胎児期の甲状腺被ばく総量が多いほど、慢性的な疾患を持つ割合が高くなる。


▼胎児期の被ばく線量が0・36グレイを超えると、慢性的な疾患がより頻繁に現れる。
▼1・0グレイ以上では、ほぼすべての子どもに影響が出た。
 
●子どもの身体発達の障害頻度は、胎児期の甲状腺への被ばく線量に相関している。

●子どもの甲状腺障害は、胎児期における甲状腺への被ばく線量が多いほど、増えている。

▼胎児期の甲状腺被ばく線量が0・76グレイを超えている子どもは、被ばく線量が0・36グレイの子どもよりも、甲状腺の超音波画像による構造的変化がより多く見られた。

●被ばくが、妊娠年齢の早い時期であればあるほど、発達上の小さな発達異常の数は多い。

●胎児の赤色骨髄の被ばく線量が多いほど、染色体異常の頻度は増えている。

 

【Ⅹ】 事故処理作業者の子どもへの先天的な影響


リクビダートル01 
(事故処理に当たる作業員。ソ連政府・当時は彼らをリクビダートル=後始末をする人と呼んだ。1986年4月)

 
 もっとも被ばくしたのは事故処理作業者。その事故処理作業者を親として生まれた子どもに、以下のような影響が見られる。

●罹患率〔※〕が安定的に高い。

▼ウクライナ全体の
  子どもの罹患率・・・・ 1032.9~1335.83/1千人
▼事故処理作業者の
  子どもの罹患率・・・・ 1426.78~1587.40/1千人
    
〔※罹患率: 特定の期間内に、集団に、新たに生じた疾病の症例数を、割合として示すもの。
有病率とも。1人が複数の疾病にかかるので、千分率で示されているが、1000を超えている。〕

●健康な子どもの割合が低い。

▼事故処理作業者を親とし、86年に生まれた子どものうち、健康な子どもの割合 ・・・・・・・・・・・ 5.0~9.2%
▼放射線状況の良好な地域の親から86年に生まれた子どものうち、 健康な子どもの割合 ・・・・ 18.16~24.60%

●先天性発達障害の頻度が高い。

▼事故処理作業者から86年に生まれた子ども 
         ・・・・・・・・・・・ 1万3136人
                  (ウクライナの国家登録簿)
▼そのうち、先天性発達障害で登録されている子ども
         ・・・・・・・・・・・ 1190人
                 (1000人当たり、90.6人)

●事故処理作業の初期に生まれた子どもが、もっとも先天性発達障害が多い。
 父親が、事故処理作業から離れて、時間が経つほど、先天性発達障害を持つ子どもの数は減少。

●神経管障害〔※〕の頻度が高い。
 W・ベルチェレスキー(米国)のデータによると、ロヴェンスク州の汚染地域で生まれた子どもには、神経管障害が高い頻度で見られる。それは、 ヨ
ーロッパ諸国での神経管障害の頻度=18.3人/1万人 よりも、かなり高い数字になっている。
        
 〔※神経管閉塞障害: 主に、先天的に脳や脊椎がうまくくっついていない状態〕

●父親が事故処理作業者の家族内で、事故前に生まれた子どもと、事故後に生まれた子どもを比較すると、健康面で以下のような違いがある。

▼慢性的身体疾患
      事故前に生まれた子どもの35.4%
      事故後に生まれた子どもの64.7%
▼3つ以上の慢性疾患
      事故前に生まれた子どもの23.8%
      事故後に生まれた子どもの57.3%
▼もっとも悪い健康指標を持つのは87年出生の子ども
      87年出生の子どもで、健康な子どもは1.8%

 父親が事故処理作業に参加した後に生まれた子どもには、結合組織の異形成症候群〔※〕などの数多くの小さな発達異常が見られる。

〔※結合組織の異形成症候群: 結合組織とは、上皮、筋肉、神経などの器官や組織の間を結びつける役割を果たす組織。異形成症候群とは、器官や組織の成長異常や発達異常〕

●同じ家族の中で、事故後に生した子どもの方が、事故前に生まれた子どもより、染色体異常の頻度は高い。理由は、染色体の破損が多いから。

●DNAのマイクロサテライト〔※〕部分の突然変異が増加。

▼父親が事故処理作業者の家族内で、事故後に生まれた子どもでは、事故前に生まれた子ども比較して、DNAのマイクロサテライト部分の突然変異の増加が見られた。

〔※マイクロサテライト: ゲノム中に散在する、短い配列の繰り返し回数に基づく多型。繰り返し回数が多くなると遺伝子もしくはその産物であるタンパク質が不安定になりやすく、疾患の原因となる。〕


【ⅩⅠ】 結論


(一) 子どもへの深刻な影響

●被災者の子どもの健康状態に、かなり否定的な傾向が見られる。
●もっとも健康状態が悪いのは、甲状腺に高い被ばく線量を持つ未成年者である。

●より幼い年齢で、慢性的な疾患が確認された。複数の病気に同時にかかる傾向があり、対処的に治療しても治りにくく、再発の傾向を持つ。

●胎内被ばくの子どもは、健康異常、身体発達異常、体細胞の染色体異常が高い頻度で見られる。胎内被ばく線量が多いほど、染色体異常の頻度も高くなる関係にある。

●被ばくした両親から、事故後に生まれた子どもには、遺伝的影響の可能性があると推測できるデータが出た。


(二) フクシマでも同様の可能性

 福島第一原発事故は、子どもの健康に悪い影響を与えるか?

 チェルノブイリ原発事故と福島第一原発事故は、レベル7の評価を受けている。それは放射能大事故に相当する。
 福島第一原発事故で、環境に放出された放射性核種のヨウ素131とセシウム137は、チェルノブイリ事故よりも若干少ないが、両者は比較しうるものだ。
 
 したがって、日本の子どもたちの健康にたいする影響は、チェルノブイリの子どもたちに観察されるものと、同じようなものであるかも知れない。
 したがって、子どもたちは、放射能リスクグループに入れるべきである。
 幼年期もその後も、常に医学観察の下に置かれるべきだ。
 その目的は、健康障害を防ぐこと、もしくは適切な時期を逃さず、健康障害を見つけるためだ。 


(三) チェルノブイリの教訓


チェルノブイリ子ども01 
(1週間の保養のためにロンドンに到着したウクライナの子どもたち。2009年3月)


① チェルノブイリと福島の事故は、核エネルギー発電において、もっとも起こり得ない事故さえ起こりうることを示した。
 これは、国家の対応システムをかなり高いレベルで準備し、常にそのシステムを維持しておかなければならないことを証明している。 

② チェルノブイリ事故が大事故であることの認識が遅く、及び住民と環境への否定的な影響の大きさに関する理解が足りなかった。
 そのことが、住民、とくに子どもの健康にたいする被害をもたらした。
 医療当局へは、時宜を得た情報はもたらされなかった。医療当局は、大きな放射能事故の医学的影響を撲滅する用意ができていなかった。
 ヨウ素にたいする予防対策の実施は、遅れたか、もしくは全く行われなかった。
 その結果、甲状腺ガンの頻度が急激に増加した。とくに子どもが甲状腺ガンにかかった。
 
③ 事故にたいするシステムが欠如していたため、事故処理作業に、その用意のない人びとが動員された。
 これは非効率であり、この人びとへの健康への影響は、正当化させるべきではない。

④ 事故による被ばく線量の大部分は、事故が厳しいときのものだ。
 したがって、人びとへの健康、とくに子どもの健康保護にかんする行動が、第一でなければならない。
 プリピャチ市とチェルノブイリ原発の周囲30キロからの住民の避難は、正しいものであり、効果があった。この避難によって、住民の被ばく線量を、約1万人・シーベルト〔※〕に防ぐことができた。
 しかしながら、若干遅かったため、最大限の効果を得られなかった。
 効果があったと認められる措置は、86年5~9月まで30キロ圏外の汚染地域から汚染されていない地域へ移転させたことだ。その結果、子どもたちの被ばく線量を30%まで防ぐことができた。
 その後、子どもたちは、毎年4週間以上、保養施設で健康の増進を行っている。

〔※ 万人・シーベルト: 集団被ばく量の単位。1万人が1シーベルトの放射線を浴びることと、10万人が0.1シーベルトを浴びることは同じ。1人あたりの被ばく線量が小さくても、被ばくした人数が大きければ、集団被ばく線量は大きくなり、社会全体のリスクは変わらない。〕

⑤ 事故に関して住民への情報伝達が遅れ、客観性のある情報が伝えられなかったことが、その後に、社会的心理的な緊張をもたらす前提となった。
 避難と移住のプロセスは、時に、家族関係、友人関係、倫理的・文化的価値観を破壊した。
 さらに、新しく住む場所にかんする被災者の選択権も考慮されていなかった。
 事故の教訓は、住民の生活条件を変えるような決定をする場合には、被災者の希望を考慮する必要がある。

⑥ すべての住民集団は、子どもを含め、事故後にも、生涯線量レベルの80~90%を超える被ばく線量を受けた。
 この被ばく線量は、チェルノブイリの放射線核種によってもたらされた。
 したがって、内部被ばく線量を低減するための措置を講じる必要がある。
 それは、汚染されていない農産物を、まず第一に、子どもにとって重要な食料品である牛乳を、手に入れる必要がある。

⑦ もし被災者のモニタリング登録名簿が、事故後すぐに作成されていたら、健康に関する問題は、より効果的に解決されていた。
 モニタリング登録名簿は、かなり後になって作成された。
 しかし、その後、毎年実施されている、被災者にたいする健康管理を含む医療モニタリングシステムは、疾患の早期発見と時機を得た充分な治療を行うために役立っている。

⑧ 子どもの健康状態の変化の原因は、放射能の影響である。
 また、放射能由来でないファクター―生活と食料条件の悪化、長期にわたる精神的緊張―も挙げることができる。
 したがって、子どもたちの健康を維持し、回復するための施策は、医療当局だけではなく、国家政策の優先事項でなければならない。

⑨ 住民の放射能の影響にかんする知識を高めるために、また、精神的ストレスを軽減するために、保健啓蒙運動を常に行う必要がある。
 また、農村地域では、教師・医療従事者・社会福祉関係者など、住民にとって情報源となる人びとに、研修プログラムを導入すべきである。

以上







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  1. 2012/01/01(日) 20:25:00|
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  1. 2012/02/17(金) 10:13:14 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集 ]

頑張ってください!

はじめまして。北海道から投稿いたします。(52歳、3人の子の母です)
首相官邸前で頑張ってらしたんですね。ブログも素晴らしいです。
それにこれはとっても貴重な資料です。でも、読むのがつらくなるくらい、ひどい実態ですね。
先日、ニュースで、福島の子供たちの甲状腺の被ばく線量が発表されていましたね。
あんなに高い数値なのに、「基準以下」の一言で済まされていました。ありえません。
その基準って、いったいどんな根拠があるのでしょう?被爆は被爆であって、もう決して消せないのに。
再稼動、許せませんね。人間としての誠意に全く欠けるやりかたです。あきらめずに、私たち大人がずっと声を上げ続けていきましょうね。
私は、4月から「線路沿いの読書日記」というブログを始めました。まだ記事は少ないですが、
小出先生や、広瀬さん、大鹿さんの本もアップしています。
良ければ、覗いてみてください。
  1. 2012/07/11(水) 23:49:41 |
  2. URL |
  3. ガタンゴトン #-
  4. [ 編集 ]

子供の被曝

こんにちわ。ちょうど子供の被曝を調べていたらこのサイトにきちゃいました。
ほんとに、福島の子供は強制疎開させたほうがいいのでは!!?と考えるようになりました。
放射能垂れ流しの現状からも、反原発運動より、子供の強制疎開を要求した方がいいのでは、と思うのですが・・・・。

追記
こんな裁判も行っていたんですね。
http://1am.sakura.ne.jp/Nuclear/kou104Yagasaki-opinion4.pdf
  1. 2013/01/26(土) 01:49:37 |
  2. URL |
  3. 海風海太郎 #-
  4. [ 編集 ]

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