福島 フクシマ FUKUSHIMA

津波被害と原発震災に立ち向かう人々とともに

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【論考】  国の除染方針は何を狙う 

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(ここから先が警戒区域。国道6号線は、南相馬市の原町区と小高区の境で寸断されている。南相馬市の3分の1に当たる小高区の全域が、警戒区域に。) 





 いま、福島では、除染をめぐる問題が大きな焦点になっている。
 この問題を南相馬市の現場を中心に見てみたい。
 それに踏まえて私の意見を述べたい。



【Ⅰ】 国の除染と住民の除染



 国や県・自治体はいま、「とくかく除染」と大号令をかけている。
 しかし、そもそも国は、避難はおろか除染にたいしても、冷ややかな態度だった。南相馬市の場合、除染が始まったのは、「子どもや妊婦をとにかく守らなければ」という住民の止むに止まれぬとり組みとしてであった。



始まりは住民のとり組み


 南相馬市の場合、原発事故直後、市の人口約7万人のうち、6万人以上の人が市外・県外に避難した。(桜井市長の発言によれば、11月現在も2万8千人が避難中)
 国・自治体は、住民の被ばくたいして、無対応・無方針だった。ホールボディーカウンターによる検査も、尿や血液の検査も行わなかった。
 そういう中で、市内に残った人や、すぐに戻った人びとの間で、避難できなかった子どもや妊婦を放射能から守るためのとり組みが始まった。
 子どもや妊婦のいる家庭にフィルムバッジを配り、生活の中の被ばく線量を測定した。さらに、勤務先や自宅、とくに自宅の中でも、寝室や居間など長時間生活する場所の空間線量を測定した。そこから、生活の仕方を工夫するアドバイスをして、少しでも被ばく線量を減らす努力が重ねられた。
 しかし、そういう努力をもってしても、空間線量の下がらない家庭があることがわかってきた。そこで、除染という活動が始まった。未知の領域だった。
 夏になる頃、個人宅や保育園などの除染が試みられた。この作業に多くのボランティアが駆けつけた。そこで除染のノウハウが、市民レベルで形成・蓄積されはじめた。
 そして、このとり組みの中から、この秋、市民のために除染を担う市民組織の立ち上げにまで進んでいる。また、内部被ばく対策として、市民の力で食品放射線測定器を導入し、食品測定を行うとり組みも進んでいる。


 
国がにわかに除染を呼号 


 国は、市民のとり組みに冷淡だったが、8月に入り、にわかに「除染に関する緊急実施方針」を打ちだし、当面の除染費用として、約2200億円を計上。その皮切りとなる「除染モデル実証事業」は、国が日本原子力研究開発機構に委託、さらにそこからゼネコンに再委託されるという形で動いている。
 しかし、市民レベルでこれまでとり組まれてきた除染と、国が呼号する除染とは、目的も方法も違う。当初から、市民レベルの除染にとり組んできた住民(50代、男性)は、国の動きを以下のように見ている。
 「国の除染はデーターをとることもなく、ただ表土を取り除くだけ。それも公的な施設だけで、個人の家や民間の土地は、それが保育園で子どもたちが集う場所であっても除染を行わない。子どもや妊婦を守ろうしている感じがしない。
 一方、除染に莫大なカネが投じられるが、それを受ける業者は、原発をつくったゼネコン。莫大なカネをもらってゼネコンが原発をつくり、今度は、まき散らした放射能をゼネコンが国のカネで取り除く。こういうことに疑問を感じる」。
 


【Ⅱ】 除染の実際と効果



 では、そもそも除染とは何か。実際にはどう行われ、効果はどうなのか。



除染とは


 除染とは、放射性物質を、ある場所から別の場所に移動させる作業だ。
 除染によって、放射性物質を消滅させたり、減少させたりすることはできない。放射性物質の量は、半減期以外の理由で減ることはない。
 除染作業の実際は、①高圧洗浄機で飛ばす、②表土をはぐ、③草・木を抜く、④コンクリートを削る、⑤側溝を流す、⑥汚染土などを埋める・・・といった単純作業の繰り返しだ。その前提として、除染対象の放射線量の綿密な測定と計画の策定が問題になる。
 除染は、移動である以上、ある場所を徹底的に除染して、空間線量を下げることに成功したとしても、その周りに押しつけただけということが起こりうる。誰のところの何処のところの空間線量を下げる必要があるのかという目標と計画について、住民の間で納得のいく議論をする必要がある。
 除染の効果を上げようとすれば、表土などを削る必要がある。それによって出た汚染土や廃棄物の処分も問題になる。その量も膨大。セシウム137は、単純計算で300年でようやく1000分の1になる。そのような長期間、それを引き受けて隔離・管理する場所が問題になる。また、農地の表土を剥ぐと、地力が落ちて農地としてだめになるという問題もある。
 とりわけ福島県はその7割が山林だ。この山林を皆伐するのか、落ち葉や表土はどうするのかなど、問題は深刻だ。また、山林には手をつけないとすれば、住宅地や田畑を除染できたとしても、雨風によって放射性物質が再び流れ込んでくることになる。
 しかも、除染作業は、内部被ばくの危険を伴う。放射性物質を吹き飛ばす作業をするわけだから、除染作業員は、放射性物質を肺に吸い込む危険がある。厳重な防護策が必要だ。さらに、除染作業が活発化すれば、放射性物質を含んだ埃が広範囲に舞い上がる。そういう状態が、おそらくは10年単位で続く。除染自体が、新たな健康被害をもたらす危険がある。大規模な除染をやるならば、一時的にせよ、避難・疎開が絶対に必要になる。



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(南相馬市・原町一小で行われた除染作業。重機で表土を剥ぎ、校内の一角に掘った穴にシートを敷いて、汚染土を埋めていた。)



「目標は10%削減」


 では、実際の除染の効果はどうなのか。
 内閣府・原子力災害対策本部の「除染に関する緊急実施基本方針」(8月26日決定)によれば、次のように言っている。
 まず、「追加被ばく線量が年間20ミリシーベルト以上にある地域」-大熊町、双葉町、飯舘村などの高濃度の汚染地域。この地域について「基本方針」では、「段階的かつ迅速な縮小を目指す」と述べるだけで、具体的な目標や方針は何も出されていない。
 次に、「年間20ミリシーベルト以下にある地域」―南相馬市、伊達市、福島市などの中程度の汚染地域。この地域については、「暫定目標」として、「2年後までに、一般公衆の推定年間被ばく線量の約50%減少を目指す」と、具体的な期限と数値を掲げている。 しかし、その中身になると、「放射性物質の物理的減衰及び自然要因による減衰:2年で約40%」「除染による削減目標:約10%」。これは、《除染では約10%しか減らせない。あとは自然に任せるしかない》と認めているということだ。



除染後に数値上昇も


 福島市が、7~8月に、空間線量の高い渡利地区・大波地区で、モデル的な除染を行った。その結果の評価・分析を、住民らに依頼された山内・神戸大教授が、「放射能汚染レベル調査結果報告書 渡利地域における除染の限界」(9月20日)というレポートをまとめている。
 その結論は、「本来の意味での除染はできでいない」。
 山内教授のレポートによれば、市の報告からも、除染の前後で空間線量は、約68%にしか下がらなった。子どもの通学路が、除染後も、1~2マイクロシーベルト/時、場所によっては4マイクロシーベルト/時。場所によっては、除染後に逆に数値が上昇したところもあった。
 除染後に上昇したのは、「周囲を山林で囲まれた地形から、放射能を含む土が住宅地に流れ込んでいるから」と、山内教授は分析している。



【Ⅲ】 除染ビジネス



 国が「除染に関する緊急実施方針」を打ちだし、莫大な予算を計上する中で、新たな利権構造が始まっている。



ゼネコンがエリアを3分割 


 11月7日、日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)が、「除染モデル実証事業」の公募結果を発表した。「除染モデル実証事業」とは、警戒区域・計画的避難区域のエリアで、政府が年明け以降にとり組むとしている「本格除染」の前段的な作業。総額で約72億円。受注したのは、大手ゼネコン3社が各々つくった共同企業体(JV)。それが該当エリアを3つに分割している。
① 南相馬市、川俣町、浪江町、飯舘村のエリアを、大成建設など6社 
② 田村市、双葉町、富岡町、葛尾村のエリアを、鹿島など14社
③ 広野町、大熊町、楢葉町、川内村のエリアを、大林組など5社
 また、これとは別に、警戒区域・計画的避難区域以外のエリアについては、福島県が公募し、大成建設が1億5千万円で受注している。



汚染の原因者が元請け


 原子力機構とは、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)を開発するなど、核燃サイクルを研究、電力業界と二人三脚で原子力産業を推進してきた組織。放射能をまき散らした原因者の一人だ。
 原子力機構は、5月に福島支援本部、6月に福島支援事務所を設置。政府から、放射性物質の分布状況の調査などを委託され、伊達市や南相馬市に職員・元職員をアドバイザーとして派遣して除染実証事業を行っている。内閣府・原子力災害現地対策本部が8月に立ち上げた「福島除染推進チーム」では、約40人中の半分以上を原子力機構の職員が占めている。
 この原子力機構が、内閣府から、上述の「除染モデル実証事業」を受注、それをさらに大手ゼネコン3社のJVに再委託。内閣府からの受注額は約100億円なのに、JVの受注総額は最大72億円。「30億円を中抜き」と報道されている。
 しかもこれはまだ序の口だ。全域の除染事業が本格化すれば、数年がかりで、数兆円の規模になることは確実だ。



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(南相馬市主催の除染をめぐるシンポジウム〔9月3日開催〕で発言する日本原子力研究開発機構の天野治氏。南相馬市を担当、住民の中に入って、除染の指導を行っている。汚染した農地について「すき込んでいい」という天野氏の指導には、住民から疑問の声があがった。)



利権の構造


 「放射線物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」成立によって始まった「除染」とは、除染利権に他ならない。
 原発の利権は、経産省-東電-元請けの電機電産プラント企業・ゼネコン-下請け企業という図式だった。それが、内閣府-原子力機構-ゼネコン-下請け企業に入れ替わったが、利権の構造という点で全く同じだ。
 放射能をまき散らした原因者が、反省も謝罪もなく、救いの神のような顔をして、利権漁りをやっているのだ。



【Ⅳ】 避難を拒む国家意志



「みんな、ものすごい不安と怒りの中にいる。
 だけど、『避難』を言ったら、非難される雰囲気。
 だから、仕方なく『ここは飯舘よりは線量が低い』と自分に言い聞かせて、自分の中で、あきらめと切り替えをしている。
 それを3~4月頃の気持ちに引き戻すのも、また残酷なことだ」。
 南相馬市で、ガレキ撤去や除染活動にとり組む住民(30代、女性)が、市民の意識状況をこのように語ってくれた。



支配秩序崩壊への恐怖


 国・県・自治体は、挙げて、「とにかく除染」と呼号し、除染によって放射能汚染はすべて解決するかのように、宣伝している。緊急避難的には除染も必要だ。が、除染には限界もある。そのことを、国は隠している。
 どうして隠すのか。
 除染が利権になっているからだという指摘も一理ある。また、県や自治体としては、住民は財源、それを一人でも逃したくないから。それも確かだが、しかしそれだけもない。
 「除染にとり組む」と言い出した8月辺りから、国は、総力を挙げはじめた。福島市渡利地区の避難勧奨地点指定をめぐる住民説明会や対政府交渉の場。避難を求める住民の側の訴えにたいして、官僚の並べる理屈はほとんど論破され、しばしば言葉に詰まりながら、なおかつ官僚たちは、「とにかく除染」と言い張り、住民の避難の要求を頑なに拒絶した。
 この官僚たちを支えているものは何なのか。それは国家の意志だ。何が何でも国家の支配秩序を守る。そういう強い意志を、官僚たちの態度から感じた。
 国は、「放射能汚染で、そこに帰ることはできない」、「そこで生活するのは健康被害の危険がある」という深刻な事態であるということをある程度、認識している。しかし、それを認めたら、住民の怒りが噴出し、内乱のような事態になり、国の支配秩序が保てなくなる。そういう治安の危機に恐怖しているのだ。
 だから、「帰れない」「危険だ」という事実を隠し、そういう事実を指摘したり、避難・疎開を求める意見を抑え込むことに躍起になっている。国としては、支配秩序を保つためなら、住民の健康が犠牲になるのもしかたがないという無慈悲な判断をした。そう見る以外に、国の対応を説明しようがない。



住民同士の対立を生む


 住民は、「帰れるのか」「住み続けられるのか」と不安に駆られている。
 それにたいして、国は、「除染すれば帰れる」、「除染すれば住み続けられる」と宣伝する。真顔で繰り替えし言われれば、誰しも「それができるなら、そうしたい」と、すがるような気持ちになるのは当然だ。
 国の態度は、そういう住民の気持ちを利用し、住民の中に混乱を持ち込んでいる。「やはりここは危険だ」「避難したい」「集団的な疎開・転地にとり組むべきだ」と避難を求める住民と対立させ、それを押しつぶそうとしている。
 本当に悪いのは国なのに、避難を求める住民と、除染に期待する住民とが対立させられてしまう。支配者というものは、追いつめられると、必ずこういう手法を使ってくる。かつて、関東大震災の危機の中で、デマを煽って、朝鮮人への襲撃が組織されたことを想起させる。



調査団がチェルノブイリで見たもの


 先頃、福島からチェルノブイリにいった民間の調査団のことに触れたい。あまり成果はなかったされているが、地元紙「福島民報」(11月10日付)の以下の記事を見ると、重要な教訓が提起されていることがわかる。
「…福島調査団の参加者は荒れ果てた人工都市の姿に、しばしぼうぜんとなった。そして、誰からともなく『除染して、住民を戻す取り組みはされなかったのか…』との声が漏れた。
 旧ソ連政府は原発事故発生後、プリピャチを含む周辺の汚染地域を『ゾーン』と呼ぶ立ち入り規制区域に指定し、11万6000人を強制移住させた。ソ連崩壊後、ウクライナ、ベラルーシ両国は住民の帰還を目指し、公共施設などの一部で除染に取り組んだ。しかし、効果的な手法を確立することはできず時間と予算だけが費やされたという。
 植物を植えて土壌中の放射性物質を吸い上げる方法も実践されたが、効果は見られなかった。町は荒野に変わり果てた。
 東京電力福島第一原発事故の避難区域を抱える南相馬市除染対策室の横田美明さんは、市の除染計画にチェルノブイリの教訓を生かそうと調査団に加わった。しかし、具体的なアドバイスは得られなかった。『チェルノブイリと異なり、土地の狭い日本では、除染しなければ住む場所は限られる。除染のモデルをつくる必要がある』と切羽詰まった様子で語った。…」
 チェルノブイリと福島の違いを挙げることはいくらでもできる。しかし同じくらい共通点を挙げることができる。問題は、その違いと共通点を正確に検討し、同じ失敗を福島でくり返さないことだ。



【Ⅴ】 除染も避難も



 除染をめぐる問題を、南相馬市の現場に引きつけて見てきた。
 では、このような現実にたいして、市民はどう進もうとしているのか。どう進むべきなのか。



自主的な行動と大同団結


 南相馬市では、津波被害にたいする捜索や救難、避難所への支援や運営、被災した家屋から泥だしなど、市民が自主的な行動に立ち上がっていった。、地域の放射線測定や除染、子どもの保養、仮設住宅の支援にとり組む市民組織がいくつも立ちあがっている。
 南相馬市の場合、放射能問題があったため、県外の被災地のように、プロ化したボランティア団体が大規模に入るということがなかった。その分、市民の自主的な行動や組織の動きが活発だ。また、国にも行政にも、期待をしたが何もしてくれないというこの間の経験が、自主的な動きを促進している。
 国の除染の動きが見えてくる中で、市民レベルの自主性を堅持しようと、市民組織が互い連携する動きも始まっている。もともと南相馬市は、小高、原町、鹿島という三つの地域からなり、それぞれの文化があるところ。しかし、それを超えて連携していこうという機運が出てきている。
 それは、「現在の子どもと将来の子どもの命と健康を守る」、「そのために行動する」、「それがどんな壮大の復興計画よりも、緊急で死活的な課題だ」ということが、共通の土台として自覚されているからだ。



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(南相馬市や相馬市から市民組織が集まり、市民レベルでの除染をどう進めるかについて討議した。)


チェルノブイリの教訓に学ぶ


 誰もが、そうあってはほしくないと思っているが、恐れているのは、健康被害が現実のものになることだ。
 その点で、チェルノブイリの教訓に学ぶ必要がある。
 ウクライナでは、原発事故後から5年後に、移住に関する法律がつくられた。
 それによれば、移住の基準となる数値は以下のようになっている。

 ・強制移住地域  
  セシウム137 55万5千ベクレル/平方メートル以上
  追加被ばく線量 年間5ミリシーベルト以上に相当
 ・任意移住地域  
  セシウム137 18万5千~55万5千ベクレル/平方メートル
 追加被ばく線量 年間1ミリシーベルト以上に相当

 しかし、これが厳格に適用されたかというと、そうではなかった。体制崩壊と経済破綻があり、主に経済的な理由から移住政策は中断されてしまった。そのために多くに人が汚染地域に取り残された。そして健康被害が急増していく。
 健康被害は、一般に言われているように、ガン・白血病だけではなかった。呼吸器系疾患、血液疾患、腫瘍など、あらゆる疾患が事故後7年後から大幅に増加した。さらに、脳梗塞や糖尿病など、一般には高齢者のかかる病気が、青年中年で増えた。子どもは、成人よりも罹患率が高く、心臓血管系疾患は成人の30倍以上になった。さらに、仮死状態の出生や自力呼吸ができないなどの出産異常、消化器系や検疫系の発達に異常をきたす新生児なども増えた。
 とりわけチェルノブイリの教訓において重要なのは、健康被害の原因となった外部被ばくと内部被ばくの比率について、外部被ばくが24%であるのにたいして、内部被ばくが76%であったことだ。食事から摂取された放射能が4分の3を占めていた。
 このため、ウクライナやベラルーシでは、事故からようやく10年後に、食品の基準値を大幅に下げた。放射性セシウムについては、飲用水2ベクレル/リットル、野菜40ベクレル/キロといったものだ。
 これに比べて、日本の暫定基準は、それぞれ200ベクレル/リットル、500ベクレル/キロと、はるかに緩い。このままでは恐れている健康被害が本当に発生してしまう。
 国に任せていたら、子どもを守ることはできない。残念ながら、この国は、「子どもを守らない国」なのだ。チェルノブイリの教訓に学び、市民の知恵と力で、子どもを守る基準と方針を早急に確立し、行動する必要がある。



権利としての避難を


 子どもを被ばくから守る。被ばく線量を低減するもっとも有効な手段は、やはり、放射能汚染地域から離れることだ。保養や疎開、一時的な避難、さらに集団的な移住の声があがっている。
 除染によって生じる粉塵による内部被ばくの危険がある。除染が本格的に始まる前に、除染作業の間だけでも、子どもを安全なところに避難させてほしいというのが切実な声だ。
 「孫といっしょに暮らすことができないのか」、「若者がいなくなったら、町は本当に廃れてしまう」。たしかに、そういう厳しい現実でもある。
 しかし、国は、上述のように、支配秩序を保つためなら、子どもをはじめ住民の健康を犠牲にしてもしかたがないと考えている。これを受け入れるわけにはいかない。
 さらに、「権利としての避難」を主張するに当たっては、法律が、「一般公衆の追加被ばく線量の限度は、年間1ミリシーベルト」と定められている〔※〕ことを、改めて、はっきりさせよう。これ以上の被ばくは許されない。国は法律を守る義務がある。官僚は、ICRP(国際放射線防護委員会)勧告を持ち出すが、これに法的根拠は何一つない。
〔※ 「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」、「放射線を放出する同位元素の数量等を定める件」、規則第19条〕



除染も市民の主導で


 現実には、経済的社会的な事情から、避難できない人がたくさんいる。そういう人たちを、被ばくから少しでも守るとり組みも大切だ。
 ところが、国や自治体が取りかかろうしている除染は、もっとも被ばくから守るべき人たちのために行われるものではない。南相馬市の最新の計画では、業者に丸投げで、放射線量の高い山側の方からやろうというもののようだ。それでは、市内にいる住民、とくに子どもや妊婦をますます被ばくさせるものにしかならない。
 さらに、汚染土を処分する仮置き場の問題がある。除染で先行する福島市大波地区では、住民の了解なしに、地区の有力者の一存で、地区内の公園に仮置き場を選定した。こういうやり方に抗議の声があがっている。
 市民が主導して、除染の目的と計画を充分に議論する必要がある。行政の押しつけではない議論の場を設定することが急務だろう。
 さらに、除染を実行するのが業者だとして、業者の行う除染の方針と結果について、市民が監視・管理する必要がある。良心的な業者もいるが、悪質な業者もいる。実際に数値が下がるという結果がでないのに、カネだけふんだくっていくということを見過ごすわけには行かない。行政も信用はできない。この間の経験と蓄積のある市民組織の下で、市民が監視・管理するとり組みが必要だ。
 また、行政が、除染の作業に、ボランティアを動員しようとしている。また、住民も駆り出そうとしている。しかし、除染は被ばくの危険を伴う作業だ。その対策や補償もない中で、人びとの善意を動員するやり方はおかしい。


 
市民による食品検査を


 チェルノブイリの教訓が教えることは、被ばくの4分の3が内部被ばく、食品からの摂取だったことだ。
 福島市大波地区で収穫した米を、農家が自主的に測定したら、500ベクレルの暫定基準を大きく超えるセシウムが検出された。そもそも大波地区は、放射線量の高い汚染地域。さらに、山に囲まれ、沢の水を田に引き込んでいるために、山に溜まった放射性物質が流れ込みやすい。にもかかわらず県もJAも、収穫前に土壌の検査もせず、収穫後の米の検査もやっていなかった。「起こるべくして起こったこと」と、同地区の農民が憤慨している。
 行政やJAは、自分の地域の作物から、「基準値以上」「出荷停止」が出るのを恐れる心理から、できれば検査をしたくないし、しても数値を低く操作するということになってしまう。そういう姿勢が、実は、風評被害を生み出す原因にもなっている。
 行政に食品の安全管理を任せることはできない。子どもを守るために、そして、生産者の守るためにも、何が危険で何が安全かを透明に発表し、住民が判断できるようにする必要がある。
 チェルノブイリ事故直後、ドイツでは、市民の力で、食品の放射能測定を行うとり組みが各地に広がった。福島県内では、福島市、二本松市、須賀川市、いわき市、南相馬市などで、始まっている。しかし、市民の必要に応えるには、測定器の数が圧倒的に少ない。
 ウクライナの基準に学び、日本でも、日本の食生活に合わせた市民による安全基準をつくる必要がある。



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(福島市内で、市民が導入した食品の放射線測定器。ウクライナ製で、3台が稼働。広河隆一氏らが呼びかける基金から寄贈された。)



市民のための医療体制を


 多くの人が、不安に駆られ、恐れているのは、健康被害が出てしまうことだ。もしも、そうなったときに、必要な治療が受けられるのか、その費用はどうなるのか、補償はしてもらえるのか、ということが重い問題としてある。
 ところが、福島の医療体制はどうなのか。その頂点に位置する福島医大は、原発事故直後、浜通り地方の医療機関から一斉に医師を引き上げた。医大は、住民の強い不安と要求にもかかわらず、健康診断や健康相談を実施しなかった。その医大の副学長に、「100ミリシーベルトまでは安全」と主張した山下・前長崎大教授がついている。
 これだけではない。避難所を回って診察を行ったり、除染作業を現場でとり組むなど、献身的に活動する医師でも、残念ながら、「今は、被ばくより、『放射能のトラウマ』の方が問題」という見方にとらわれている。
 福島医大を中心とした福島の医療体制を、福島の住民は信用できなくなっている。
 さらに、上述したように、南相馬市では、市民の被ばくを「学術的価値が高い」といい、「放射能の有効活用」を看板にする医療医療研究機関がつくられようとしている。
 このままでは、市民が健康被害で苦しんでも、「トラウマが原因」とされるか、モルモットにされるかということが危惧される。
 市民の力で、市民のための医療体制をつくるとり組みが求められている。
 

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★除染にかんする過去の記事★
児玉教授の講演と南相馬市の除染をめぐって





 
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テーマ:「原発」は本当に必要なのか - ジャンル:政治・経済

  1. 2011/11/26(土) 17:01:59|
  2. 除染
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<除染期間中だけでも一時避難を   渡利地区で住民集会 | ホーム | ここは「死の町」か   警戒区域内から搬出作業>>

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