福島 フクシマ FUKUSHIMA

津波被害と原発震災に立ち向かう人々とともに

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

甲状腺がんの患者・家族が声をあげた —家族の会の設立

「『放射線の影響ではない』というなら、何が原因なのかを知りたい。『原発事故の影響ではない』と証明できるなら、はっきり証明をしてほしい」

 小児甲状腺がんの患者と家族が声をあげた。
 東京電力福島原発事故後の県民健康調査で小児甲状腺がんと診断された5人の子どもとその親(5家族7人)が、「311甲状腺がん家族の会」を結成した。
 3月12日、都内で行われた記者会見には、患者の父親2人がインターネット中継で福島から訴えを行い、また、都内の会場では、同会の世話人である河合弘之(弁護士)、千葉親子(ちかこ/元会津坂下町議)、牛山元美(医師)の三氏が会の設立の趣旨について報告した。


KJS001_20160316100351404.jpg 
(左から、牛山元美氏、河合弘之氏、千葉親子氏)

KJS002_20160316100352ff5.jpg 
(インターネットで中継し会場のモニターに映し出された2人の父親)


 2人の父親の会見は、氏名も顔も明かさず、音声も変換して、インターネット中継という形で行われた。父親の話は控え目で、告発や抗議のような言葉もほとんど聞かれなかった。
 ここに患者や家族が置かれている福島県内の状況が示されている。
 「絆」、「復興」、「風評被害」―これらの言葉がメディアから流され、有力者の口から語られ、地域社会の中で唱和される。それが言葉の圧力となり、放射線や健康被害の問題を口にすることが、あたかも「風評被害」を助長し、「復興」の足を引っ張り、「絆」を壊す行為としてはばかられる空気が作り出されていく。
 県民健康調査・検討会議の専門家たち、一部の医師たちが発する「原発事故の影響とは考えにくい」という言葉も同じことだ。患者や家族は被害者であるにもかかわらず、被害を訴えるどころか、自分たちが何か間違ったことをしたかのように思わされ、自分たちを責めてしまっている。そして、誰にも相談することができず、孤立を強いられている。
 患者と家族は、がんを発症するという苦しみ、そして、手術や後遺症の苦しみ、さらに再発の不安の上に、被害者なのに自分を責め、誰にも相談できずに孤立するという二重三重の苦しみを強いられている。
 だからこそ、「『放射線の影響ではない』というなら、何が原因なのかを知りたい。『原発事故の影響ではない』と証明できるなら、はっきり証明をしてほしい」という患者と家族の訴えは重い。 河合弁護士は次のように指摘する。「国や福島県のやり方は、放射能による病気という核心部分を否定することだ。そうすることで、原発事故の損害・被害の全体をなきものにしようとしているのだ。だから、この核心部分を絶対に否定させてはならない。まさに、病気発生という核心部分の事実を明らかにして、『因果関係がある』ということをはっきりさせることが、被害者の救済にも、原発をなくしていくという点でも重要なのだ」(発言要旨は後段で紹介)
 「考えにくい」という言葉を繰り返す星北斗・県民健康調査検討委員会座長(福島県医師会副会長)や鈴木眞一福島県立医大教授らは、患者・家族の訴えに正面から答える義務がある。

 以下は、3月12日の記者会見から、患者家族である2人の父親、牛山医師、河合弁護士の冒頭発言と質疑応答の要旨を掲載する。〔わかりやすくするため、順序は入れ替え、また趣旨を変えずに構成した〕


KJS003_2016031610035325e.jpg 
(超音波による甲状腺検査を実演する鈴木眞一福島県立医大教授。〔被験者役はスタッフ/2012年11月4日郡山市内の甲状腺検査住民説明会〕。鈴木教授は原発事故後に多発する甲状腺がんの検査と手術を担当。
 原発事故当時18歳以下だった約38万人を対象に福島県が行っている甲状腺検査で、これまでに166人が甲状腺がんまたはその疑いと診断。通常に比べて数十倍高い発生率。手術を受けたのは117人〔うち1人は良性〕)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


【Ⅰ】「何が原因なのか究明を」
        ―患者の父親



KJS004_20160316100355b5a.jpg 
(左側の白い服がAさん。Aさんは10代の女子を持つ父親。右側の黒い服がBさん。Bさんは当時10代の男子を持つ父親。いずれも中通り在住/写真は家族の会より提供)


 がん宣告のショック

―小児甲状腺がんと宣告されたときのお気持ちは?

Aさん:10代の子どもががんと言われまして、私も妻も大変ショックでした。
 それ以上に本人もショックで、大泣きしたというのが事実でございます。

Bさん:うちの場合も、先生からダイレクトに「あなたはがんです」って言われまして、息子も、顔面蒼白になって、椅子に座っていられないぐらい血の気が引いちゃったような感じになりました。
 私も、がんと言われて正直、気が遠くなるような感じで、ひどい思いをしましたけど、息子は、ショックで数日間かなりふさぎ込んでおりました。

―誰かに相談するとかそういうことは?

Aさん:自分の子どもががんであるということは誰にも言えませんでした。子どもも友達には言えません。学校には伝えてはいますが、誰に相談していいかというのもわからなくて、家族だけで悩むということがずっとありました。病院にいったときにちょっと先生と話すくらいで、その他ではもう甲状腺がんの話を出すということが正直できなかった状況です。

Bさん:孤立と言いますか、自分の子どもが実際にがんと診断されて他人に相談できるかと言ったら、たぶんできる人はいないと思います。正直。
 がん、イコール死というイメージが強かったものですから、とにかくもう、本当に恐ろしいというか、怖かったです。

 「放射線の影響は考えにくい」

―県立医大の対応や説明についてどう感じていますか?

Aさん:「放射線の影響とは考えにくい」と言われて、では何が悪かったのかを知りたいというのが本当のところです。
 「考えにくい」というのに何度も検査しているわけで、何でなのかなという思いがあります。
 原因がはっきりわからないので、今後、再発しないかとか、他に転移はしないかとか、それが一番心配なところです。

Bさん:息子の目の前で「あなたはがんですよ」って言われたのは、ものすごくショックでした。10代の思春期の子どもに、ちょっとあの言い方はきつかったという感じがします。
 私たちは、当然ながら甲状腺がんの知識はないので、とにかく藁にもすがる思いで、先生の言うことを聞いて、治療すれば大丈夫なのかなと思っておりました。
 ただ再発ということが払しょくできないのが不安です。

―がんの宣告を受けたとき、医師から、セカンド・オピニオンについての知らせはありましたか?また、がん患者には患者会があるのですが、その紹介はありましたか?さらに、がんの状態についての説明は何分ぐらいでしたか?

Aさん:セカンド・オピニオンについてはっきりした説明はなかったと記憶しております。
 患者会については、甲状腺がんも全部含めた(がん一般の)案内はいただきました。診察時間が10分ぐらいだったので、説明もそれくらいだったと思います。
 医大に紹介された患者会に妻が行ってきました。患者会というより、先生の説明会という感じで、甲状腺がんを持つ親というのは見受けられなかったようです。

Bさん:セカンド・オピニオンについては何の説明もありませんでした。患者会についても知りませんでした。説明の時間は10分以内だったと思います。

―放射線の影響に関してどういう言葉で説明されましたか?

Aさん:診察の時、「放射線の影響はあるのですか?」と訊きましたら、「影響はない」ではなかったのですけど、「考えにくい」という表現で言われました。

Bさん:私の場合は、当然、原発の影響かなと思いまして、訊ねてみたところ、先生は「ありません」とはっきりおっしゃいました。

―小児甲状腺がんが多発していることについて、「過剰診断をしているからでは」という専門家もいますが?

Aさん:確かに検査の精度も上がって、従来なら見つからなかった小さながんも見つかるようになったとは思います。しかしうちの娘の場合、比較的大きな状態で見つかりました。明らかにがんだとわかる形で見つかっていますので、過剰診断とかではないと思います。

 患者・家族を孤立させる圧力

―顔も隠して音声も変えてという形でしか話をすることができない状況についてどう感じていますか?

Aさん:甲状腺がんの原因がはっきりしていませんので、今のところ原因がわからないのでこういう状態になっていると思います。原因がはっきりわかっていれば、いいのですけど。
 それから、福島県では、放射能による風評被害というのもかなり大きくて、放射線とかその辺の言葉を言うと、さらに風評を高めてしまうとか、農産物が売れなかったりとか、非常にその辺が・・・。だから無意識のうちにそういった言葉を言いづらくなってしまっていると思います。

 ◇ケアと原因究明

―政府や福島県、あるいは東京電力に対して訴えたいことは?

Aさん:「放射線の影響とは考えにくい」というのが今の見解ですので、放射線の影響ではないとするならば、他の原因が何なのか、(小児甲状腺がんと診断された)166名の方々の原因を探っていただきたいと思います。

Bさん:放射線との因果関係は極めて低いという見解が出されていますけど、では一体何が本当なのかを知りたいです。

―東京電力に関しては?

Aさん:今のところちょっと思い当たることはありません。

Bさん:東京電力さんが原因だという確たる証拠があるわけじゃないので、そこのところはすいません、控えさせてもらいます。

―患者と家族にとって何が必要ですか?

Aさん:やはり10代の子どもががんと言われまして、非常に落ち込んでしまいまして、それが家族としては一番心配するところです。精神的なケアを充実してもらいたいと思います。

Bさん:今後望むのは、メンタルのケアをやっていただきたいと思います。

― 一番の要求は原因をはっきりさせるということですか?

Aさん:原因はわかっていないのですけれども、原発事故の当時福島で生活していたこと(は事実)。「放射線の影響が考えにくい」というのであれば、それ以外の原因は何があるのかを知りたいです。
 「原発事故の影響ではない」と証明できるのであれば、はっきり証明をしてほしいと思います。(救済というより)まずは原因を知りたいと思います。

Bさん:私も、最初に、根本的な原因が何かを知りたいです。

 家族の会ができて

Aさん:いままで子どもの病気のことは、周りの誰にも言えずに、病院の先生と孤独に話すだけでした。「甲状腺がん家族の会」ができまして、同じ病気の子どもさんを持つ親と、子どもの普段の様子、手術前後の体調のこと、またいろいろな悩み事など、いままで誰にも言えなかったことを話すことができて、本当によかったと思っております。同じ境遇の人たちと話すことで、気持ちが大変楽になりました。私たち家族にとって力強い味方です。世話人の方々の存在も大変力強いと思っております。
 定期的に集まり、情報・意見の交換などができればよいと考えております。同じ立場にある方が多くいると思います。是非、この会を広めていっていただければと思っております。

Bさん:気持ちの分かり合えるみなさんとお話ししただけでも、本当に救われた気持ちでいっぱいです。
 まだまだ大変多くの方々が悩んでいると思いますが、勇気を振り絞ってこの会に参加していただけたらと思います。


【Ⅱ】腫瘍の大きさと
  転移の事実、再発の可能性 
         ―牛山医師



KJS005_201603161003560de.jpg 
(牛山医師は神奈川県内の病院で内科医として勤務。福島県内などで健康相談会に参加、また福島県内の病院で当直支援。2013年にはベラルーシの医学アカデミーで研修も)


 「甲状腺がんは進行も遅く、命に関わることのない悪性度の低いがんだ」と言われていました。しかし、それは中年以降の女性に見られる甲状腺がんの話です。福島原発事故以前、小児甲状腺がんは非常に稀でした。
 チェルノブイリ原発事故後に増えたとされる小児甲状腺がんは、腫瘍が小さくても、リンパ節や肺に転移を起こしやすく、進行しやすいと言われています。
 今回ほとんどの方を手術された福島県立医大の報告を見ると、手術を受けた方の90%以上は、腫瘍の大きさが手術適応(手術をするべきかどうかを判断する)基準を超えていたり、小さくてもリンパ節転移や肺転移を起こしていたり、甲状腺の外に広がりを見せて進行したもので、すぐ手術をしてよかったという症例だったということでした。
 このような事実からすると、甲状腺がんが多数見つかっていることについて、「検診をした所為だ」「スクリーニング効果だ」「過剰診断だ」という意見は、事実にそぐわないと思います。

 「考えにくい」が患者を苦しめている

 では、なぜこれだけ多くの甲状腺がんが福島の子どもたちに見つかったのか。それはまだ全く解明されていません。放射線の影響かどうかも、県の検討委員会の中でさえ意見の相違があり、「影響とは考えにくい」とか、「影響を否定するものではない」と、非常にあいまいな表現をされています。
 患者さんやご家族は、今回診断された甲状腺がんがなぜ起こったのか、とても悩んでおられます。患者さんのお母様は「あの頃の食事が悪かったんだ」「放射能汚染を気にせず食べさせたから」「外で遊ばせたから」、子どもは「自転車で通学したのがいけなかった」と、あるいは「遺伝的なものなのか」とか。みなさん、自分がいけなかったのかと悩んでいます。
 
 セカンド・オピニオンが閉ざされている

 実は手術を受けてそのあとに再発された方も複数おられます。再手術の前に、治療方法についてセカンド・オピニオンを希望される方も当然いらっしゃるわけですが、福島県内では、県立医大に行くようにと言われて、相談に応じてくれる医療機関もほとんどなく、セカンド・オピニオンの実現が困難な状態です。よりよい医療を受けたいという、患者や親の当然の願いを実現させたいと思っております。
 担当医師とのコミュニケーションもうまく取れていない。それをうまく取れるようにもっていっていただきたいと思っております。
 甲状腺がんについて、忌憚のない意見の交換や適切な情報共有をして、できるだけ不安を取り除きたいと思っています。

―県立医大のやり方は、患者を置き去りにしている感じがしますが?

牛山医師:県立医大からは、あまりにも情報が出てきません。では患者さんには心のケアとかをされているのかと思っていましたが、ご家族からお話を伺うと、決してそうではない。いろんな問題点があると思います。家族会で改善していければと思います。

―一般には「甲状腺がんは取ってしまえば大丈夫」といわれていますが、再発とか、後遺症とかがあるのでしょうか?

牛山医師:県立医大の手術では、ほとんどが片側の甲状腺しか取っていません。もう片方は残してあるわけです。そうすると薬を飲まないで済むのですね。でも、残っている方の甲状腺に多くは再発があります。すでに再発している方や再発が疑われている方がいます。
 ベラルーシでも、片方だけ取って、結局、もう片方も取らなくてはならなくなったという方がたくさんいたと聞いています。それは再発しているからです。
 そして手術をされたときは、大体は喉に違和感があったり、物を飲み込みにくいとか、声がかすれるということが多く出てきます。
 再発は、断端(だんたん/切った端)からではなくて、切り取った部位とは離れたところから出ていると聞いています。
 乳腺や甲状腺の場合、最初にがんが出た時点で、どこからがんが出てもおかしくないのです。それは遺伝子の異常が起きているからと言われています。だから組織を残しておくとまたそこからがんが出てくる可能性はあるわけです。甲状腺も最初から全部取った方が安全は安全ですけど、それでは傷が大きくなったり、後遺症を残しやすいので半分は残しておきたい。だけどチェルノブイリの例では、半分残した人が続々と再発して、結局、2回目の手術を余儀なくされて傷も大きくなった。そこは医者として非常に難しいところです。
 では今の環境でなぜ再発が起こっているのか。今の生活の中で新たに放射性ヨウ素によって甲状腺にがんが発生するような条件にはない。セシウムなど他の放射性物質の問題はありますが。とにかく最初に被ばくした時点で、遺伝子レベルで変化が起きている。それがひとつ、またひとつと時間をずらして出てくれば、最初は片方を取ったけれども、また片方に出てくるという形で再発するのだと思います。

―県立医大は「予後(病後の経過)がいい」と説明していますが、それは違うということですか?

牛山医師:いや、(必ずしもそうではなく)チェルノブイリの場合もそうなのですけど、例えば肺への転移の場合、放射性ヨウ素を使った放射線治療をするのですが、それでがんが抑えられ、消えていきます。だから、リンパ腺や肺に転移していると言うと、普通のがんであれば非常に重篤で末期の状態ということになりますが、放射線(由来の甲状腺がん)の場合、そうではないと言われています。
 そこが、「甲状腺がんは楽な、安全な、安心ながん」と言われるところなのですが、しかしがんはがんなのです。放置しておけば命に関わるものになるし、チェルノブイリでも死者は出ています。「安全で放っておいてもいいがん」ではありません。
 何よりも10代の子どもががんだと言われるショックを考えてみてください。

―とくに福島県内の医者の協力はどうでしょうか?

牛山医師:福島の中で、同じように憂いている医者たちはいます。
 ただそういう方たちは、県民健康調査の委託医という資格をとっていて、実際に県立医大の先生方といっしょに検診をされています。そういう方が発言すると、ご自身がやっている仕事がやりにくくなったり、県立医大との信頼関係が難しくなるということで、残念ながら福島の医者の方たちは名前を出すことができません。ただ仲間ですので相談をし合っています。


【Ⅲ】「因果関係がある」と認めさせる
          ―河合弁護士



KJS006_201603161004130c5.jpg 
(河合氏は、数々の大型経済事件を逆転勝利に導いてきた弁護士。現在は脱原発弁護団全国連絡会共同代表。東電の旧経営陣らを告訴・告発し、2月末に旧経営陣3人の強制起訴を勝ち取った福島原発告訴団)

 ◇核心が否定されている

 3・11以降、深刻で大きな被害が出て、ADR(裁判外紛争解決手続)や訴訟が全国で争われています。1万人が訴訟を起こしています。でもそれはぜんぶ財物損害(家屋などの損害)と精神的慰謝料だけです。
放射能被ばくの被害・損害の核心は、放射線から発生した病気です。健康被害などという甘い表現を私は使いません。放射線による病気、とりわけ小児甲状腺がんや白血病が被害の核心です。
 図で書くと〔下の写真参照〕、大きい丸が放射線被害の全体です。その大半を占めるのが財物損害と精神的慰謝料です。でも財物損害も精神的慰謝料も、元は、病気すなわち甲状腺がんや白血病などになるということから発生します。


KJS007_201603161004159b5.jpg 


 だからこの核心部分が否定されると、原発の大きな損害の全体がわからなくなります。
放射能の高いところにいると病気になるから避難するわけです。精神的苦痛も、放射能で病気になるのではないかと不安に感じるからです。だから財物損害も慰謝料も元は放射線による病気というところに核心があります。
 ところが、膨大な損害の核心部分がスポッと抜けて、否定されています。それが大問題なのです。
 核心部分がスポッと抜けるとどうなるか.全部、底抜けになります。「放射能との因果関係は考えにくい」「病気が発生するかどうかわかんない」となると、「家が放射能で住めなくなることもはっきりしない」ということになり、財物損害も慰謝料も根拠がなくなります。それは、結局、「放射能は怖くない」「原発の再稼働をどんどんやろう」という論理になっていくのです。
 すべての被害・損害は放射能による病気というところから発生しているわけですが、その核心部分を否定してしまおうというのが今のやり方だと私は考えています。
 だからこの核心部分を絶対に否定させてはならない。まさに、病気発生という核心部分の事実を明らかにして、「因果関係がある」ということをはっきりさせることが、被害者の救済にも、原発をなくしていくという点でも重要なのだというのが私の考えです。
 「因果関係がある」ということをきちんと社会的にも政治的にも立証していかなければならないとのです。ここはまさに天下分け目の戦いです。

 ◇患者の深刻な分断

 では、なぜこの核心問題が抜けているのか。
 患者の皆さんは、お互いに顔も名前も知らず、団結もなく、完全に分断されてきました。また、現代医療において当然認められるべきインフォームド・コンセント(十分な説明を受けた上で治療に同意すること)やセカンド・オピニオンということが、この間の甲状腺がんの治療過程では、完全に否定された状態にあります。
 「あなたはこういうわけで病気になった。だからこういう治療をする」というふうにやっていくのが今の医療でしょう。ところが、「はい、あなたはがんです。はい、切ります」と。そこで「原発事故が原因なのでしょうか?」と訊いたら、「違います」と言われてしまう。
 そこには、問答無用で恩恵的家父長的な治療はあっても、インフォームド・コンセントはないのです。不安だからセカンド・オピニオンを求めようと思っても、とんでもないことになるという恐怖でそれができない。さらに、セカンド・オピニオンを求められた医者も、福島県立医大や福島県と後で面倒なことになるので、やはり「県立医大に行ってください」となります。
 こうして、患者はセカンド・オピニオンも求められず、完全に分断され、抑え込まれていているわけです。
 僕たちも、何とかアプローチをしようと県立医大や福島県に訊いてみましたが、「とんでもない。個人情報ですから教えられない」と。こうして、166人という数はわかっても、どこの誰か全くわからなかったのです。
 これは本当に憂慮すべき事態だと考えていたところに、カミングアウトしてくれる人たちが出てきてくれました。これはもう抑えきれないのだと思います。
 だから、すべては何から始まるかというと、患者さん同士がお互いに知り合い、どういう状態かという情報を交換し合うところから、始まるということです。

 ◇立証責任の転換を

 現在の国際的な合意は、放射線量と白血病その他の発病率は「しきい値なし」ーここから下は安全というしきい値がないー、それから「直線モデル」ー放射線量と発病率は正比例するーこれが国際的な合意です。IAEAも認めています。
 そして、ある原発から大量の放射性物質が放出されて、その範囲に住んでいる人間が甲状腺がんになったら、原則として、その甲状腺がんはその原発の事故の所為だと認定すべきです。
 もちろん、その甲状腺がんが別の理由だときちんと立証できたら、話は別ですが。例えば、レントゲン検査で、誤って甲状腺に大量の被ばくをしてしまったとか。それは医療ミスです。
 そういう別の理由がキチンと立証されない限り、原則として、原発事故により放出された放射性物質と因果関係があると認定すべきです。
 そもそも<福島原発から発生した放射性物質が、こういう風に乗って流れていって、それがこの子どもの甲状腺にくっついて、そこからがんが発生した>ということを立証するのは不可能です。そういう不可能な立証ができていないということを理由に、「考えにくい」として否定するのは法律的に間違いです。法律的には、因果関係は被害を訴える側が立証しなければならないのですが、本件や公害の場合には、立証責任が転換されるということになっています。
 まさに、「考えにくい」と否定する側が、因果関係を否定する例外的な事由を立証しなければいけないという考え方、そういう判断枠組みを変えないと、被害者は全く救済されないということを私は強く訴えたいのです。

 ◇患者・家族が団結して

 やはりご家族の方が言われたように、因果関係を認めさせることが大事だと思います。
 因果関係が認められないとき、損害賠償ということはおよそないわけです。「治療だけはしてやる」と言うけど、その治療も極めて恩恵的な家父長的な治療になります。それではダメなのです。
 まず「因果関係を認めなさい」と政策要求を出していく。「国と東京電力に責任があることを前提に対策をとってください」と。何かものを頂戴とか、情けをかけてくださいと言っているのでないのです。
 そして、正当な要求を認めてくれということを通すには、被害者が団結しないとダメなのです。個人が孤立している限り、親が訴えても本人が訴えてもダメなのです。患者・家族が結束して申し入れや発言をすると、それは社会的勢力による発言と見なされます。そこではじめて注視され、尊重されるようになるのです。そういうための家族の会だということです。
 もちろん、その基礎にまずはお互いが知り合って情報を交換し、慰め合い、団結する必要があり、それが第一目的です。そうした後に来るものが社会的勢力として自分たちの正当な要求を政策に反映させていくことだと考えています。   (了)






関連記事
スポンサーサイト

テーマ:「原発」は本当に必要なのか - ジャンル:政治・経済

  1. 2016/03/16(水) 16:00:00|
  2. 健康被害
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<福島 フクシマ FUKUSHIMA 2011.5-2016.3 | ホーム | 【論考】  被ばくとガン  福島第一原発の現場から 第2回>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://fukushima20110311.blog.fc2.com/tb.php/114-2047369e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。