福島 フクシマ FUKUSHIMA

津波被害と原発震災に立ち向かう人々とともに

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「納得いかない。どう考えても納得いかないんだ」  中間貯蔵・搬入開始

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(住民説明会の場で、環境省などの官僚たちに向かって、意見を述べる池田耕一さん〔写真中央の起立している男性〕。昨年6月1日)


 3月13日から、大熊町に設けられた保管場への除染廃棄物の搬入が開始された。当初、双葉町の保管場にも同時に搬入を開始する予定だったが、双葉町民から抗議の声があがり、開始が延期された。今後どう展開するかは予断を許さない。
 「保管場」はあくまでも一時的な置き場。除染廃棄物を処理・貯蔵する「中間貯蔵施設」の用地取得は、まだ全く進んでいない。地権者2300余人の同意がないからだ。福島県知事や大熊・双葉両町の首長の受け入れ表明が大きく報道されているが、肝心の地権者で同意に漕ぎ着けたのは現時点まだ2300余人中たった1人。地権者の大半が交渉にさえ入っていない状況だ。にもかかわらず、国は、除染廃棄物の搬入を開始した。

 こうした中で、地権者の一人、双葉町大字郡山の池田耕一さん(84)にお話を聞いた。池田さんは、この地で6代250年続く農家。福島第一原発のサイトから約3キロ、敷地境界からは約1.5キロのところでコメとホウレン草づくりに精を出していた。現在は南相馬市に避難中だ。
 「国のやり方に納得がいかない」
 これが池田さんをはじめとする地権者の率直な気持ちだ。
昨年の説明会で地権者から出された要望や意見に対して、国は答えていない。それどころか、説明会以降、国からの池田さんへの話は、電話が一回あっただけ。誠意が見えない。そして、国は「30年以内に持ち出す」と言っているが、そういう空手形でごまかそうとするやり方に、池田さんは不信を抱いている。用地取得が進まないことを地権者のせいであるかのように世論を仕向け、被災者同士を分断するようなやり方にも憤っている。
 ふるさとを汚染された上に、さらにそのふるさとを永久に奪われる苦しみ。これに対して国は向き合おうとしていない。このことを池田さんたち地権者は訴えている。
 池田さんは、また、「国民全体で負担を分かち合って」と訴えている。中間貯蔵施設問題は、国と地権者との間だけの問題ではないはずだ。ところが、国民の大多数にとって他人事になってしまっている。国民の大多数がそういう意識であることによって、大きな被害を受けた者に、もう一度、被害を与えるような理不尽がまかり通ろうとしている。そして汚染の原因者・加害者らが、そういうことを平然と繰り返そうとしている。
 除染廃棄物をどこに持っていくのかという具体的な議論に入る前に、私たちには、考えるべきことがある。
 池田さんら、双葉町、大熊町の地権者のみなさんの声に耳を傾けてほしい。
 

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まだ何の話し合いもないのに



――13日から、一時保管場所への搬入が始まります。〔インタビューは3月7日〕

池田さん:なんか堰を切ったように、どーっと行こうとしているね。国が流れをつくって、被災している私らを、抑え込もうとしているわけでしょ。
 地権者は2千3百人ぐらいかな。その地権者の同意も取らずに、どうよ、このやり方。しばらく前にはね、「地権者一人ひとりにご説明に伺います」といっていたのに。

――去年の5~6月、国による住民説明会が、また9~10月に地権者説明会が行われましたが、その後、どのように進められてきたのでしょうか?

池田さん:地権者説明会のときはね、国からは、「福島県民の生活を良くするために、大熊さんと双葉さんにお世話になんなくちゃなんない。ご理解ください」ということだったね。
そしてプリントを渡されてね、水田が1平米なんぼ、畑がなんぼ、山林がなんぼ。いやもう、見たら、買い取りの基準がうんと低いんだ。事故前の5割って、私らにとっては半値以下だからね。
 「新たに土地を見つけて、家をつくって、生活して下さいよ」と言われてもね、国の基準では、土地は買えても、家は建たないのよ。いわき市だって原町だって、ずっと高いわけ。なぜ移転先の価格を基準にしないんだって。で、土地を買ったけど家が建たないから借金するとなるけど、みんな高齢化しているから、銀行さんも貸してくれないわけでしょ。
 そんなねえ、放射能がなければあのふるさとに住でいたのに、なぜそんな低い値段を踏むんだって。地権者説明会のとき、「この数字では、家は建たないよ。即見直して下さい」っていったけど、国は「帰って、検討させていただきます」とそれだけ。

――検討した結果は?

池田さん:何も変わっていないね。

――すると、地権者の方に個別の説明は?

池田さん:ないね。連絡も電話が一回だけ。環境省からね。
「地権者の方を訪問していますが、いろんなところに避難していて、わからない人もいて時間がかかっています」と。わかる人を先にやればいいんだよね。
 「で、私のところはいつごろになりますか?」って訊いたら、「池田さんのところは大分遅れるんですが・・・」と。「ああ、いいですよ。でも、できれば早くね」。
 そういうやりとりがあった。それがだいぶん前の話だから。それ以降、何の連絡もなし。
住民説明会を12回に分けてやって、われわれは本気になって意見を言ったよね。でも、それがぜんぜん届いてない。これは情けないね。

――結局、説明会以降、国から何の話もないのに、13日から搬入が始まると。これは大変なことですね。 

池田さん:3月3日の新聞(福島民報「中間貯蔵施設」特集)には、Ⅰ型施設とか、Ⅱ型施設だとか、中間貯蔵施設の配置図が出てるんだよね。もう決まったことのようにね。まだ話し合いだって始まっていないのにだよ。私ら地権者は無視されてるんだよ。
 それから、「一時帰宅のお墓参りは最後ですよ」ってことも新聞に書いてある。今度の3月11日が最後で、除染廃棄物の搬入が始まったらもう墓参りもできないんだね。いやいや呆れちゃうね。こんな状態だったら騒ぐよ。
 これね、相手が国だからね。これが民間の一対一の話だったら、こんなことは絶対に成り立たないでしょ。原子力発電所をつくるときと、なんかやり方がそっくりだね。

※池田さんは、50数年前の原発立地前の住民説明会に参加している。このときの貴重な証言があるがそれは続編として掲載予定



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(原発事故前の池田さんの自宅。6代、250年の歴史が積み重ねられている)



地権者同士のつながりへ


――双葉町としては、今年1月13日に受け入れを表明していますが。

池田さん:残念だよね。だって、12回にわたって説明会をやって、賛成意見を吐いた人は、ほとんどいなかったわけでしょ。で、町民懇談会をやって、そのときも、私から伊沢町長に、「町長、大熊町は受け入れたけど、隣り町が受け入れたからって、双葉町も受け入れなくちゃなんないということはないんだから。地権者とよーく話し合ってから結果を見たらいいんじゃないの」って言ったんだ。でもね、町民懇談会をやって間もなく、受け入れを表明したんだよね。いやー、町長は慎重に事を運んでいる人だから高く評価しているんだけど、もう苦しくて言っちゃったということだろうね。
 本当はね、双葉町だったら郡山と下条(げじょう)の地権者で会議を持って、そこで、何回も議論して結論を見出すというのがいいんだろうけど。集まるということは非常に大事なんだよね。でも、みんな、散り散りバラバラに避難している状態だから、なかなか難しいんだな。
 でも、今年に入ってから、大字郡山の区長の斉藤宗一君(双葉町から茨城県に避難中)が、事態を大変心配して、大字会(行政区の集まり)をやろうということになって、やったんだよ。

――みなさんの意見はどうでしたか?

池田さん:そこで、いろいろ話が出たけど、みんなの意見を総合すると、やっぱりね、息子の代では無理でも、孫や曾孫の代には帰れるのではないかって思っているわけだよ。ふるさと、生まれた家をぶん投げてきたけども。孫、曾孫の代になって、あの恐ろしい放射能がなくなってよかったという時代が必ず来るよ。まあ何十年かかるかわかんないけど、いつかかならず帰れると。
 それなのに、除染廃棄物が山ほど積まれたら、ものすごい量だからね。大字郡山が山になってしまうんだから。で、大気汚染や地下水汚染でダメになって行くでしょう。で、最終処分場ができたとしてそこに持ち出しても、地下水の汚染なんかは何百年と続くでんしょう。水が汚れてしまったら、結局、住めなくなるんだよ。
 大字郡山の人たちも、大熊さんの人たちも、そこで生まれた人にとっては、みんなそういう気持ちなんだな。


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(収束作業中の福島第一原発の排気塔が、大字郡山からは直近に見える)



「中間」「30年以内に」という欺瞞


――国は、「30年以内に県外に持ち出す」としていますが。

池田さん:そもそも、なぜ二つも施設をつくる必要があるんだろうね。なぜ最初から一つに絞らないんだと。膨大な無駄でないか。施設を二つ作って、運び込んで、また持ち出してと、もう膨大なお金がかかる。国はそれほど豊かではないでしょ。最初から最終処分場を見つけてつくったらいいわけでしょ。その方が、金もかからないわけだから。
 それに、「30年以内に県外に持ち出す」というけど、今できないんだとすれば、30年後の孫、曾孫の代になったら、なおさらできないんでないの?

――国は「30年以内」という約束を守るでしょうか?

池田さん:例えば地上権の話ね。われわれは、いつか必ず帰れるって思っているから、土地は売らないで所有権は住民に残したいのよ。これは当然でしょ。だから、国が国有化したいといっても、われわれ地権者は、地上権だけは残して、国に対して貸すということを考えているわけだよ。
 だけど、新聞〔福島民報3/3付〕を読んでたら、「地上権」ということで、「土地の所有権は住民に残す。ただ、地権者の承諾がなくても登記や譲渡、転売ができるため、借り主(ここでは国)には土地賃借権(ここでは地権者)よりも一段強い権利がある」と。
 私らには全く理解できないんだけど、つまり、「30年以内って言ってたけどやっぱりダメだったので、しばらく置いときます」と国が言いだしたとき、「返しなさい」と言っても、地上権の方が強いということでしょ。いや驚きだね。
 それから、中間貯蔵施設に貯蔵されたものを、焼却できるものは焼却して、振り分けて、産業復興に再利用できるものは利用するとか言ってるよね。「30年以内に持ち出す」という話が、いつの間にか、こういう風に使えるんだって話になっちゃってるんだよ。
 こうしてみると、やっぱり、どう考えても、国のやり方って言うのはなんか、われわれにとっては納得いかないね、納得がいかないんだよ。
※環境省 2014年10月28日 衆院環境委員会

――納得できないということのひとつに、そもそも、「中間貯蔵」とか「30年以内」といのが欺瞞だという思いがあるということですね。

 池田さん:そういうことだよ。私らも、ただただ反対しているわけじゃないんだよ。双葉町に汚染廃棄物を持ち込まれるのがいやだということだけを言ってるんじゃない。国も、県も、大熊・双葉の両町も、みんながいい方向になればと思ってるんだ。だけどね、納得できる話を国がしてくれないんだから。


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(震災前、ホウレン草のパイプハウスの中で作業の手を休める池田さん夫妻)



国民全体で分かち合う


――説明会でもふるさとへの思い、ふるさとを失う苦しみを切々と訴えていました。

池田さん:池田家が相馬に来て私で6代目。250年ぐらい前に、鳥取から相馬にやってきた。1代目のご先祖が「相馬二編返し」という民謡の、「ハァ 相馬相馬と 木萱もなびく なびく木萱に 花が咲く 花が咲く」という節にほだされて、こっちを目指したそうだ。頼る親戚も縁故もあったわけじゃないんだよ。
 途中、千葉の銚子で漁師をしたりして、ようやく辿りついたところは、一面平らで、広い広い葦谷地だったんだ。
 「よしここを切り開こう」とご先祖が決めてから、毎日毎日、筋肉労働で、荒地を興して、寝る間も惜しんで、汗みどろになって。そうやって代々、少しずつ水田を広げていった。で、私の代で、3町3段3畝(約330アール)だな。
 コメとホウレン草ね。コメは、インターネットでも販売していて、本当においしいから、人気だったよ。それでもコメだけでは生活を支えることができないんで、パイプハウスで一年中ホウレン草をつくっていた。夫婦二人で本当によく働いたよ。
 そうやって、先祖代々励んで、築き上げてきたものなんだ。だからご先祖がそうやって築いた財産を、そんなに簡単には行かないんだよ。

――先祖代々の土地への思いを誰も踏みにじることはできないと思います。しかし、国は、そういう思いを汲もうとしませんね。

池田さん:そうだね、残念ながら。
 「福島県を復旧・復興しなくちゃなんない。元のきれいな福島県にしなければならない」。そりゃその通りだ。だけどそう言いながら、なぜ大熊、双葉に廃棄物を持ってくるの。そしたらこの2町村は永久に復旧・復興できないじゃないのって言っているんだよ。
 で、大量の廃棄物を一カ所にまとめるから、山のようになるわけだよ。それを同じ国民で、小さく分け合って、持ち合えばということも、言っているんだよ。ちっちゃく分け合って、持っていればいいじゃないの。

――全国民で負担を分かち合って、解決すべき問題ではないかと。

池田さん:そういうことだよ。
 ところがね、例えばこういう話があるんだね。仮仮置き場の契約延長を巡る話だけど。地主さんは、「3年契約じゃなかったのか」って言うわけ。たしかにそういう契約だったからね。で、その町の町長さんが地主さんに詫びてるんだけど、その町長さんがどういう風に話したかというと、「双葉町、大熊町の方々が・・・」って。なんですか、地権者の所為にしているのよ、地権者の所為に。われわれ、別に反対、反対って言ってるわけでもなく、そもそも話し合いもできていないのに、「地権者との交渉が難航して進まない」んだと。
 これは、ほんとに私ら、腹は立てたくなくても、腹立っちゃうよ。大字会でも、「ゴネてないよねー?」っていったら、「そうだー!」ってみんな声を挙げてたよ。

※誤字ではない。仮置き場のさらに前の段階

――同じ被災者同士が分断され対立させられていますね。そして、一番責任のある東京電力や、一番泥を被らなければいけない国が逃げてしまっています。汚染廃棄物をどうするのかという問題を、大熊町、双葉町の人たちに押しつけるのではなくて、国民全員が当事者となって考える必要がある。言い換えれば、現状は国民の大多数にとって他人事になってしまっている。国はそれをいいことに、大熊町、双葉町に押しつけようとしている。「それはおかしいのではないですか」ということを訴えられていると思いました。

池田さん:そう、そう、その通りだね。
 同じ国民で小さく分け合ってと言ったのは、そういうことを言いたかったんだ。
 私ら地権者がどういう気持ちでいるかってことを、国の人にも、国民の皆さんにも、本当にわかってほしいんだ。

〔了〕




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テーマ:「原発」は本当に必要なのか - ジャンル:政治・経済

  1. 2015/03/14(土) 12:00:00|
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