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「何のための除染か?直ちに中止してほしい」    飯舘村 住民説明会



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 国・環境省が進める除染が、飯舘村で行き詰まっている。

 6月25日、飯舘村飯野出張所で開催された、飯舘村小宮地区を対象にした「除染作業実施のための住民説明会」を取材した。環境省福島環境再生事務所が、小宮地区の除染を開始するに当たって、除染の進め方を地区住民に説明し、同意を取り付けようというもの。小宮地区は130世帯。全世帯が県の内外に避難をしている中、この日は約80人が参加した。


130625kmy002.jpg(飯舘村二枚橋の田圃で行われている除染の現場)


 飯舘村の除染は国の直轄で行うとされている。2011年9月段階での「飯舘村除染計画書」では、住環境の除染について、2011年度中に着手し、2年程度で終了するとしていた。また、2012年5月段階の住民説明会では、2012年度に村の西半分、2013年度に東半分の除染を実施するとしていた。しかし、現在のところ、除染に着手できているのは、全20地区のうち、二枚橋・須萱と臼石の2地区のみ。
 国・環境省および菅野典雄村長が推し進める「除染して帰村」という考え方に、多くの村民が不信を抱き、除染に同意をしていないからだ。そして効果をうたって開始された除染だが、実際にやってみると芳しい成果が挙がっていないのが実情だからだ。

 

疑問噴出


 この日の説明会は、今年度実施予定の地区に対するもの。全体で約2時間半。環境省職員が、約40ページのペーパーを配り、それに沿って除染のスケジュールや工程、住居やその周囲の樹木、農地などについての除染方法、それへの同意取得の手続きの進め方、さらに、小宮に新設される仮設焼却炉の概要などにかんして、1時間ほど説明を行い、その後1時間半の質疑が行われた。
 質疑では、住民から、除染についての疑問が次々と出され、環境省は要領を得ない答弁に終始した。その主要なやり取りは以下のようなものだった。〔一部要旨〕


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【住民】何のための除染なのか?何回やるのか?どこまで線量を下げるのか?1ミリシーベルトというけど、何年かかるのか?そういうことが何一つ書いてないじゃないか。
【環境省】大変むずかしい質問だ。できるだけ下げる。残念ながら除染の効果は場所によって違うので、はっきりした数値は示せない。
何とか今の計画は進めてさせていただきたい。長い取り組みになるが、地道にやらせてもらいたい。
【住民】それじゃあ、「除染のための除染」、「ゼネコンのための除染」じゃないか。きっちりした数値目標を出しなさいよ。
【住民】環境省の考えている「人が生活していい被ばく線量」とはいくつなのか?村長は、年間5ミリシーベルトといった。それもどうかと思うが、環境省が狙っているのは、年間20ミリシーベルトではないのか?


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(環境省職員が要領の得ない答弁に終始、住民は呆れ、苛立ちを募らせた)


【環境省】国の方針としては、最終的には、年間1ミリシーベルトを目指すということに変わりはない。
【住民】「最終的に」ではなくて、今回の除染ではどうなのか?何の目安もなくていいのか?
【環境省】一律にどこまで下げるかの数値の持ち合わせはない。申し訳ない。ただ、年間50ミリシーベルトのところはその下に、年間20ミリシーベルトのところはその下に・・・。
【住民】「やってみないとわからない」ということね。(会場、失笑)
 これだけの資料の中に、目標とか線量とかがひとつも示されていない。それが、村民が一番気にしているところだ。どこで帰村宣言が出されるのか、不安に思っている。
 数値目標を決めるべきだ。NHKも報道(6月14日付 NHK NEWS WEB 掲載)している通り、除染業者との契約で、具体的な数値目標を出させないために、結果も曖昧になっている。
【住民】除染がうまくいかなったとき、どうするのか?前回(5月)の懇談会のとき、責任者の方が、「これから勉強する」といっていたが。
【環境省】リバウンド(除染後に線量が元に戻ること)の原因追究はできていない。申し訳ない。私どもで分かるのは、現場での作業の方法についてだけだ。


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(環境省の答弁が要領を得ないため、菅野村長が助け舟)


【村長】目標についてだが、村としても、最終的には年間1ミリシーベルト。しかし、これは、毎時0.23マイクロシーベルトということ。これを実現するのは大変だ。
 だから村としては、当面年間5ミリシーベルトで、という話をしている。少なくとも5ミリシーベルトを目標にしてもらう。
 小宮の田圃の実験では、毎時5~6マイクロシーベルト前後のところが、毎時1~1.5マイクロシーベルトに下がっている。毎時1マイクロシーベルトでもいいよという人と、それではだめだという人がいる。それでいいよという人には、それで帰村してもらう。それではだめだという人は、すぐには帰れないわけだから対応を考えないといけないということだ。
【住民】環境省の話は、何回、訊いても、「やってみないとわからない」という。
 それから、村長が、田圃の除染で線量が下がったといったけど、それは田圃に水を入れる前だからだ。水を入れたら、濁り水が入ってまた線量は上がる。水を入れて、田圃を始めてから、線量が上がったというんじゃたまらない。
 「とにかくやる」というだけの除染なら、直ちにやめてもらいたい。「私は除染の現場なので他のことは分からない」という答弁では話にならない。
【住民】そもそも、国が示しているのは、「原発事故が起きて、放射能が降りました。しようがないから除染します。で、除染してみたけど下がりませんでした。しようがないけど帰還して下さい」という風にしか聞こえない。
私たち若い者にとっては、これから先の生活のことがあるのに、今のことしか考えていないようなやり方ではどうかと思う。
【住民】村長さん、これは受けとめ方の違いだと思うけど、年間5ミリシーベルトというのは、放射線管理区域だよ。放射線管理区域というのは、放射線による障害を防止するために設けられる区域で、法令で取り決められているんだよ。
【住民】質問に対する環境省の答えは、「わかりません。でもメニューはこれだけです」って。そんな人たちにたいして、除染の同意ができるか?「分からない」という人はやめて下さい。「あとは現場で相談して」と言われても相談にならない。
 同意書を出さないとどうなるのか?もう対象外で補償も対象外になるのか?
【村長】そういうことはないが、7~8割の人の同意でやっていく。全員の同意までは待てない。ある程度のところで始めたい。

〔なお、これ以外に、住居の周りの除染で、針葉樹は切るが落葉樹は切らないことへの疑問、同意取得の手続きを環境省が、建設コンサルタント会社に丸投げていることへの批判、仮設焼却炉で、除染廃棄物を燃やすことはないのかという危惧などが、出された。とくに仮設焼却炉の問題は重要だが、時間切れで終わっている。〕


除染の行きづまり


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(山間の谷筋を道が縫うように走る。小宮地区はこういう風景が続く)


 この日のやり取りの中にいくつかの大きな問題が突き出されていると感じた。

 ひとつは、住民の側の「除染の数値目標を示すべき」という当然の求めに対して、環境省は、何も示すことができなかった。
 「できるだけ下げる。残念ながら除染の効果は場所によって違うので、はっきりした数値は示せない」
 「リバウンド(除染後に線量が元に戻ること)の原因追究はできていない。私どもで分かるのは、現場での作業の方法についてだけだ」
 環境省の現場サイドとして、除染の効果について全く確信を持てなくなっているということが窺える。やってもやっても成果があがらない。とにかく除染という作業をこなしているだけ。それ以上でも以下でもないというのが正直な実情なのだ。
 除染直後にはいったん下がった放射線線量も、1カ月後、半年後には元に戻っているという例は枚挙に暇がない。また、ある場所とある場所を取ればたしかに下がっているが、全体として見れば、結局、セシウムの半減期による物理的な減衰と、セシウムの地中への浸透・沈降による遮蔽効果によって、放射線量がゆっくりとだが下がっているということを大きく超えるものになっていない。そして、はっきりしていることは、事故からこれまでの2年間は、半減期の短いセシウム134が放射線量の低減に寄与してきたが、これから先は半減期の長いセシウム137の影響でどんどん下がり方は緩慢になるということだ。


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(小宮地区の概観図と除染範囲。谷筋の黄色で囲んだ部分が除染範囲 環境省提示)

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(除染範囲の拡大図 環境省提示)


 上の2枚の画像は環境省が示した小宮地区の航空写真だ。飯舘村全体が中山間地だが、その中でも小宮地区は、住居や農地が谷合に点在している様子がわかる。環境省は、この写真の黄色い線で囲んだ範囲を除染するという。山全体を除染することは絶望的だからだ。ということは、放射性物質がそのままになっている山があり、その山に囲まれた住居や農地だけを除染するという。それでは中長期的にはほとんど効果がないことは明らかだ。
 この除染のために、飯舘村だけで総額3千224億円が投入される。人口6000人の村にだ。もちろんのその金は1円も村民には渡らない。また除染作業員もギリギリの賃金しか受け取れない。ほとんどがゼネコンやその関連企業の懐に入る。
 まさに、住民が批判するように、「除染のための除染」、「ゼネコンのための除染」なのだ。そして、「『とにかくやる』というだけの除染なら、直ちにやめてもらいたい」。これが多くの住民の声である。



下がらなくても帰村


 いまひとつは、このように除染の行き詰まりが明らかになっている中で、住民の間に広がっている危惧は、国や村長が、除染の行きづまりを開き直って、放射線量が自然減衰以上には下がらないのに帰村を宣言し、補償を打ち切るのではないかということだ。
 「環境省の考えている『人が生活していい被ばく線量』とはいくつなのか?村長は、年間5ミリシーベルトといった。それもどうかと思うが、環境省が狙っているのは、年間20ミリシーベルトではないのか?」
 「そもそも、国が示しているのは、『原発事故が起きて、放射能が降りました。しようがないから除染します。で、除染してみたけど下がりませんでした。しようがないけど帰還して下さい』という風にしか聞こえない」
 実際、除染を開始する当初は、「年間1ミリシーベルトを目指す」と掲げていたが、この間、村長は年間5ミリシーベルトという数値を公言し、国もそれを渡りに船にしようとしている。
 さらに、村長は、「毎時1マイクロシーベルトでもいいよという人と、それではだめだという人がいる。それでいいよという人には、それで帰村してもらう」と、この日も発言している。毎時1マイクロシーベルトの放射線量の下で生活するということは、低く見積もっても年間5ミリシーベルト以上、単純計算をすれば年間8ミリシーベルト以上の被ばくをするということだ。
 住民の危惧が、現実味を帯びてきている。もちろん、健康被害のリスクを理解した上で、自らの判断で戻るという選択もあるだろう。また、村長も言葉の上では、「毎時1マイクロシーベルトではだめだという人は、すぐには帰れないわけだから対応を考えないといけない」と言って、戻らない選択も示してはいる。が、それを額面通り受け取っている住民は少ない。
 そもそも、なぜ、飯舘村の住民だけ、あるいは福島県の住民だけが、他とは違う基準で被ばくを強制され、健康被害の危険にさらされなければならないのか。法治国家を標榜する日本において、権利や義務が、明らかに平等に扱われていない。住民の様々な要求や訴えの中には、この強い不信と憤りが貫かれている。 (了)



 
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テーマ:「原発」は本当に必要なのか - ジャンル:政治・経済

  1. 2013/06/30(日) 10:00:00|
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