福島 フクシマ FUKUSHIMA

津波被害と原発震災に立ち向かう人々とともに

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市民の力で食品の放射能測定を開始    南相馬市


①1978_convert_20120116162232 
(放射能測定器が温州みかんの測定結果を表示。セシウム137が145.5ベクレル/キログラム、セシウム134が128.9キログラム)




 1月8日と9日、南相馬市の「アクティブ&セイフティー福島(A&S福島)」事務所で、放射能の基礎的な問題と放射能測定器の使い方についての勉強会が行われた。

 A&S福島は、昨年11月に発足した市民団体。南相馬市を中心に、空間線量の測定や食品の放射能測定を行っている。国や行政が信用ならない中で、南相馬市の住民が集まり、自分たちの力で、汚染の現状を把握し、対策を考え、生活の安全、とくに食品の安全をつくり出そうというとり組みを始めた。 
 朝日新聞の連載「プロメテウスの罠」(12月22日付)でも紹介された。
 チェルノブイリ被災者支援で歴史と実績のある「NPO法人 チェルノブイリ救援・中部」のみなさんに、支援と指導を受けている。この日は、名古屋から、チェルノブイリ救援・中部・理事の河田昌東さん(元名古屋大教員)を始め、多くの人びとが参加した。



学習と研修
 

③1983_convert_20120116162611 

 河田さん(写真上・中央奥)から、「放射能とチェルノブイリの被害」というテーマで報告があり、その後、質疑と討論が行われた。
 
 それに引き続いて、年末に搬入された放射能測定器の使い方について、研修が行われた。説明に当たるのは、A&S福島の高橋慶代表(写真下・中央)。

④「1961_convert_20120116162800 



実際に食品を測定


⑤1968_convert_20120116162937 

 この日は、実際に、食品を持ち込んで測定を行った。
 写真上の女性が手にしているのは、玉ねぎ(右手)と熟した柿。いずれも原町区内の自家栽培の畑や自宅の庭で取れたもの。
 検体(分析の対象)は、細かく刻むか、ミキサーにかけるなどの前処理をしてある。

 写真下は、飯舘村で採取した川の水。

⑥1962_convert_20120116163135  


⑦1970_convert_20120116163327 

 検体は、専用のマリネリ容器(検出器が入り込むように、容器の底が突起している。開発者の名に因む)に入れる。
 ただし、容器を汚染させないために、容器に直接入れないで、ポリ袋を被せてから、検体を入れる。
 そして、秤に乗せて、重さを量る。検体の重さの標準は、概ね420g。



NaI(Tl)シンチレーション検出器
 

⑧1966_convert_20120116163503 

 写真上が、ドイツ・ベルトールド社製の「ガンマ線スペクトロメーターLB2045」。
 開くと測定部の真ん中に、NaI(Tl)シンチレーション検出器が突きだしている。
 検出器の回りを厚さ5センチの鉛の遮蔽体で囲っている。 それは、バックグラウンドを遮るため。バックグラウンドとは、検体以外から来る放射線。自然放射線もあるが、南相馬市のような汚染地域であれば、地面や天井に付着した放射性物質による放射線が大きい。

 写真下は、蓋を左右に開き、測定部に検体の入ったマリネリ容器を入れている。突きだしている検出器に、マリネリ容器の突起部分がちょうど、はまるようになっている。
 
⑩1974_convert_20120116163756 

 この装置は、上述のように、「NaI(Tl)シンチレーション検出器を用いたガンマ線スペクトロメーター」。ガンマ線を出す放射性物質を、核種(ヨウ素131、セシウム134、セシウム137など、原子核の状態で分類した原子の種類)ごとに判別し、その濃度(ベクレル/キログラム)を調べる装置。

 その仕組みを簡単に見てみよう。
 まず、放射性物質は、核種ごとに、放出されるガンマ線のエネルギーが異なる。たとえば、セシウム137は、662キロ電子ボルト(keV エネルギーの単位)。セシウム134は、569、605、769の三種類(いずれも単位はキロ電子ボルト)。 この相異に着目して、判別を行う。
 ところで、NaI(Tl)とは、ヨウ化ナトリウム(NaI)に微量のタリウム(Tl)を添加した結晶。シンチレーションとは蛍光。 ガンマ線が、NaI(Tl)の結晶に入ると、ガンマ線のエネルギーに比例して、蛍光(シンチレーション)が発生する。この性質を利用して、ガンマ線によって発生した蛍光を、電気信号に変換する。
 そうすると、ガンマ線のエネルギーごとに、単位時間(1分ないし1秒)当たりのガンマ線のカウント数(cpmないしcps)が得られる。その結果を、横軸にエネルギーの大小、縦軸にカウント数をとって、スペクトルで表示する。
 本稿の最下段の写真にあるのがガンマ線スペクトル。ピーク(山)がいくつかある中で、右から一つ目と三つ目がセシウム134のピーク、右から二つ目がセシウム137のピーク。 このピークを中心とした面積から、一定の統計処理と換算式を経て、放射性物質の濃度(ベクレル/キログラム)が算出される。

 なお、問題になる核種は、福島の現状では、差し当たり、セシウム134とセシウム137。
 また、ストロンチウム90はベータ線、プルトニウム239はアルファ線と、放出する放射線が異なるため、この装置では測定できない。

 言うまでもなく以上の過程は装置が処理してくれるので、われわれは、冒頭の写真にあるように、「どういう放射性物質が、何ベクレル/キログラムある」と表示された結論を見ればいいわけだ。



⑫1976_convert_20120116164251 

 タッチパネルで、サンプルの重さを入力、測定する核種を選定、測定時間を入力して、スタート。
 測定時間は、通常30分。ただし濃度の低い検体を測定する場合、精度を上げるために、10時間ぐらいかける。



測定の結果 


 写真下は、原町区馬場の民家にあったユズ。 これを30分間で測定してみた。

⑬1987_convert_20120116164426 

 30分後、次のような測定結果がプリントアウトされてきた。

⑭1984_convert_20120116164617 

 写真上のグラフがガンマ線スペクトル。上述したように、ピーク(山)がいくつかある中で、右から一つ目と三つ目がセシウム134のピーク、右から二つ目がセシウム137のピーク。

 馬場のユズの測定結果は、セシウム137が1131ベクレル/キログラム、セシウム134が915.9ベクレル/キログラム。合計で2046.9ベクレル/キログラム。
 かなり高い濃度の汚染だ。 
 また、冒頭の写真に結果が表示されているように、原町区内の温州みかんは、セシウム137と134の合計で、274.4ベクレル/キログラム。低くない。 
 いずれも、事故直後の3~4月は花も実もなかったので、葉面吸収(葉っぱから直接、放射性物質を取り込む。お茶の葉でも同じことが起こっている)が原因と思われるが、研究が必要だ。

 飯舘村の川の水は、セシウム137と134の合計で、32.2ベクレル/キログラム。
 流れている水を取ったので、意外に高くない。恐らく底の泥を採取したら、高い数値が出ると思われる。 

 原町区片倉で採取したスギの雄花を、別の日に測定したが、結果は、セシウム137と134の合計で、9531ベクレル/キログラム。
 これだけ汚染されたものが、これから花粉となって飛ぶことになる。

 なお、A&S福島の放射能測定は、まだ試行段階で、以上の数値はあくまでも参考値。2月1日から、受付を開始し、本格的な測定が始まる。
 詳しくは、アクティブ&セイフティー福島(A&S福島)のウェブサイトへ。



食品新基準も甘い

 これまで、住民は、自分の家の周りの空間線量の測定などを通して、放射能汚染の現状を住民自身でつかみ、その対策を考え、行動をしてきた。
 これをさらに前に進めるとり組みが始まった。

 商店で売っているものもさることながら、福島では多くの人びとが、日常的に、自家栽培の野菜や果物を食べて生活している。これが一体どれくらい汚染しているのか。また、どういう作物が、どういう条件だと汚染するのか。どういう作物と条件だと汚染しないのか。そもそも土壌や水の汚染はどうなのか。
 こういうことを、住民自身がつかみ、科学していくということだ。 
 チェルノブイリ救援・中部が作成した「南相馬市放射線量率マップ」に引き続いて、地域全体の田畑の土壌汚染状況をマップにする必要もあるだろう。

  さらに、次のような問題もある。
 ひとつひとつの作物や食品の汚染度が分かったとしても、それを単品で丸ごと食べているわけではない。1日3食で、どれだけのセシウムを取り込んでしまっているのか。それをどれくらいに抑えたらいいのか。抑えるにはどうすればいいのか。
 こういう観点から、たとえば、調査に協力してもらえる家庭で、家族と同じ食事を、一人分余計に作ってもらい、これをまとめて測定する。こういう「陰膳」方式による測定も必要になる。

 また、昨秋のコメの汚染問題では、県もJAも、まともに検査もしないで、「安全宣言」を出していた。後になって、農民の自主的な検査によって、500ベクレルを超える汚染が発覚。国・東電に加えて、県とJAもが、被害を小さく見せようとして、かえって信用を失墜させ、被害を大きくしてしまっている。
 これは、消費者はもちろん、まじめにプライドを持って生産してきた農家にとっても、全くやり切れないことだ。
 住民自身の力で、生産者と消費者の双方を守り、協力するとり組みが是非とも必要だ。

 さらに、4月から食品の放射性セシウム基準値が改訂される問題もある。
 一般食品については、これまでの暫定基準値500ベクレル/キログラムを、新基準値で100ベクレル/キログラムに改訂するという。
 これはまだ甘い基準だ。
 ウクライナでは、食品に由来する内部被ばくによって慢性疾患が多発し、子ども始め多くの人びとが苦しんできた。その痛苦な教訓から、たとえば、野菜で40ベクレル/キログラム、果物で70ベクレル/キログラム、飲料水では2ベクレル/リットルと、はるかに厳しい基準を取っている。
 ところが、この基準改訂にたいしてさえ、「復興の妨げ」(コープふくしま・専務理事の野中氏 地元紙「福島民友」1月16日)という圧力がかかっている。
 状況は、甘くない。子どもをはじめ、この地域で生きざるを得ない人びとの命と健康を守るために、行動しなければならない。

以上



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  1. 2012/01/16(月) 17:01:28|
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